破壊神の残した呪い
今まで知らなかった、破壊神ゼルベクトの真実。
あまりにも壮大な、その事実を前にアイアースは……。
「おう、そうかい」
非常に、どうでも良さそうだった。もう心の底からどうでも良さそうな顔で、いい加減飽きたとでも言いたげにネヴァンを見ていた。
「そ、そうかいって。君は……! 今の話を聞いて何とも思わないのか!」
「別に。俺様たちの世界でも破壊神とやらは仕留めてるわけだしな。勿論相応の被害はあったが、世界は正常に回ってる。お前らはそう出来てねえ。それだけの話だろ」
アイアースの言いようにネヴァンは頭がクラッとするのを感じる。
理解の外だ。確かに目の前のアイアースは異世界とはいえ世界の守護装置であるのに、その世界を脅かす可能性をあるものに対する興味というものが一切見えない。
世界の守護装置というものは存在そのものが正義に近いはずなのに、何故こんなものが存在しているのか?
しかし、そんなネヴァンの心情をアイアースは別に考慮しない。つまらん昔話が終わったな、程度にしか考えていないからだ。
「で、つまらん昔話も終わったところで、だ。俺様とキコリは元の世界に帰りてえんだよ。何か手段持ってねえか?」
「つまらん昔話、か」
「怒ったか? ごめんな。でも俺様はどのみちこの世界じゃ大したことも出来ねえしな。おまけに此処にいるのもあんましよろしくねえ。手段があるならさっさと出してほしいんだよ」
「ない」
「あ?」
「さっきも言ったが、そういうのは時空の神の領域だ。私には何も出来ないし……時空の神がいたとして、簡単にいく話ではない」
そう、異世界への移動とは単純な話ではない。
世界が違えば法則も違い、分岐世界と呼ばれるものも含めればそれこそ無限のような数が存在する。
そんなものの中で1つの世界の1つの時を見つけ出すというのは、砂漠の中で特定の砂粒を見つけると言っているのに等しい。
不可能ではないが、「不可能ではない」というだけでしかない。
「可能にするものがあるとすれば……『縁』だろうね。そういったものがあれば座標を設定できる可能性はある。あるが、やはり最終的には世界移動の能力が必要になる」
「……世界移動、ねえ。心当たりは?」
「時空の神が倒れた以上、この世界にそういう力を持つ可能性があるモノは1つしかいないよ」
言われてアイアースは「あー……」と嫌そうな顔になる。今までの話を総合すれば、答えが1つしかないからだ。
「……破壊神ってわけか」
「その通りだ。しかし私を頼るということは、あの破壊神は……」
「ドラゴンだ。まあ、そんな能力はねえな」
「だろうね。絶望的だろう?」
「かもしれねえな。しかしまあ……あのレルヴァとかってのは破壊神の手下なんだろ?」
「ああ」
「なら、手は残ってるかもしれねえ」
だから戻せ、と言うアイアースにネヴァンは溜息をつきながら「そうかい、好きにするといい」と応え……瞬間、アイアースの姿が消えていく。
そうして誰も居なくなった場所で、ネヴァンは歪んだ笑みを浮かべる。
「ハ、ハハ。まさかレルヴァと話し合いをしようとでも? 出来るはずもない。だが、出来たとして……レルヴァをこの世界から持っていってくれるならば良しといったところか」
そこまで言って、ネヴァンは「ハハ……」と乾いた笑みを漏らす。今の自分の言葉の意味を、誰よりも深く理解しているからだ。
「ハハハ……ハハハハハハ! この私が! 何処とも分からない世界にこの世界の不幸を押し付けることを望むか! そんな浅ましさが何処かで破壊神を生むと知りながら! フフ、ハハハハ!」
呪われている。どうしようもなく、呪われている。破壊神の残した呪いが、この世界を果てしなく蝕んでいる。誰も、どうしようも出来ないままに。
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