神殿内部
そうしてキコリとアイアースは何度かの戦闘を経て……ついにそれらしき建物の前に辿り着く。
神殿。幾つもの柱を持つ、かなり大きな建物だ。
何処となく荘厳な印象を持つこの建物こそが神殿、に見えるが……此方の世界の常識で神殿がどういうものか分からないので断言はできない。
しかし何より、問題はそこですらない。もっと大きな問題が2人の前に立ち塞がっていたのだ。
「……アイアース」
「ああ、入り口が盛大に崩れてやがるな」
丁度入り口があったであろう場所。そこがまるで爆破でもされたかのように大きく崩れていたのだ。
まさかこんなところが偶然ピンポイントで崩れ去るとも思えないので、以前此処にいた人たちが破壊したのだろうか? しかし「何故?」という疑問が次には浮かんでくる。
「神殿の入り口を壊して……信仰を守った、のか?」
「あ? 意味が分かんねえよ」
「だから、神像に祈る人たちにとって、それは神に繋がるものであるわけで」
「おう」
「それを壊されるっていうのは自分たちの信仰を壊される気分だったんじゃないかな、と思う」
「ふーん……分かんねえな。だがまあ、そういう概念があると納得はした」
神像。竜神は違うが、大神にはキコリは神像に祈ることで出会った。
あの時の満たされた感覚を……キコリは、今でも覚えている。
だから、此処の人間たちが神像を守るために「そうした」というのであれば、それは非常に納得いく話であったのだ。
「とはいえ、俺たちもこの奥に行かなきゃだからな。その想いは踏みにじってしまうわけだが」
「うるせえバカ。さっさとこの瓦礫退かすぞ」
そんな掛け合いをしながら、キコリとアイアースは入り口をふさぐ瓦礫を少しずつ退かしていく。
特に建築に関する知識があるわけでもないが、だからといって魔法で吹っ飛ばせばいいというものでもないのは分かっている。入り口ごと神殿を壊したというのであれば、もう笑うしかなくなってしまう。
だからキコリとアイアースは協力して瓦礫を少しずつ退かしていたのだが……そうしているうちに、キコリたちくらいなら入れそうな空間が出来上がる。
全ての瓦礫を退かしたわけではないが、入るだけならこれでも構わない。別に神殿の復旧作業に来たわけではないのだから。
試しにキコリが適当にその近くを軽く叩いてみても、崩れる気配はない。なら、入っても問題はない……はずだ。
キコリとアイアースは頷きあい、その穴を潜っていくが……大丈夫。向こう側に抜けても、穴は塞がる気配すらなかった。
「で、此処が神殿内部……か」
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