思ったよりずっと
響く爆発音は地面を抉り、キコリたちを舞い上がる粉塵が覆う。
上空からの目隠しと言えばいいように聞こえるかもしれないが、この程度の粉塵で見失うほどに濃いものでもない。何より、爆発魔法であれば掠るだけでも攻撃になるのだ。どんどんと降り降ろされてくる魔法は、まさに的確な攻撃と言えるだろう。
逃げながら走るキコリはどうするべきか必死で考えて……すぐに、それに思い至る。
「アイアース!」
「言ってみろ!」
「ドラゴンロアだ! アイアースも出来るだろ!?」
「よし、それだ! やるぞ!」
そう、キコリは1度ドラゴンロアでレルヴァを倒している。そしてアイアースもドラゴンなのだ、ドラゴンロアを使えない理由がない。
何より……ドラゴンロアは、使用する魔力が少ない。これは今のキコリたちにとって大きな利点だ。
だから、キコリとアイアースはレルヴァへと向き直る。
キコリは、その内に殺意を練り上げて。アイアースは、そのドラゴンらしい無の感情で魔力を練り上げて。
「「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」」
そして、放たれる。そしてそれは、ただのドラゴンロアには留まらなかった。
2体のドラゴンによるドラゴンロア。しかしそれを放ったのはキコリとアイアースという、ドラゴンには珍しく友情らしきものを成立させた、相性の良い者同士であった。
だから、だろうか? ドラゴンロア自体も、それぞれを邪魔しない非常に相性の良いものであった。ならば……どうなったのか。それはドラゴンロアの「融合」であった。
2つのドラゴンロアが混じり合い、より強力なものとなってレルヴァたちを蹂躙し破裂させる。
しかしそれはキコリは勿論、アイアースにとっても意外な結果で、思わずポカンとした顔をしてしまう。
「なんだあ? 今の……」
「思ったよりずっと威力が高かった、よな?」
キコリにアイアースは「うーん」と唸った後に「分からん」と切り捨てる。
「まあ、同時に使うことで威力が上がることもある。そういうことでいいだろ」
「そうだな。今のは偶然かもしれないし」
「そういうこった。1度の体験で何か判断しようとすると大抵痛い目にあうもんだし、何よりも」
「検証している魔力の余裕はない」
「よし、そいつが分かってれば問題ねえ」
アイアースはキコリの背中を軽く叩くと快活に笑う。話が早い奴はアイアースとしても好感が持てるのだ。
「じゃあ先に進むか。神殿を見つけないとな」
「ああ。ぶっ壊れてねえといいんだが」
「やめてくれよ。本当にそうだったらどうするんだ」
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