出さなければならない、答え
「え……ええ? なんだよ。突然どうしたんだよ」
「オルフェはお前を甘やかしたのかもしれねえけどな、俺様は甘やかさねぞ」
「だから、何を」
「それ以上歪むのをやめろ。ドラゴンの適応力はマイナス面にだっていくらでも働くんだ」
「歪むって」
「自覚してねぇなら言ってやる。お前は他者の切り捨て速度が異常に速ぇ。その癖して、気に入った奴への溺愛っぷりもおかしい。具体的に言うとシャルシャーンの性格したユグトレイルで、攻撃性はヴォルカニオンだ。他のドラゴンの悪いとこだけ煮詰めたような性格しやがってナメてんのか」
「言い過ぎじゃないか……?」
「うるせえまだ言い足りねえぞ脳みそグラウザードが」
「脳みそグラウザード!?」
凄い言われようではあるが、なんとなく自分でも心当たりがあるだけにキコリとしては何も言い返せはしない。何より自分のために言ってくれていると分かっているからこそ、キコリとしては言い返せない。言い返せないが……キコリとしても反論したい部分は、ある。
「でも俺、今は結構幸せだぞ……?」
「おうそうかよ。だがな、お前はもっと望んでいいんだ。俺様たちドラゴンは、それが許されてる。果たすべき義務と引き換えにな」
そう、義務。ドラゴンは世界の安定のために身体を張る義務がある。
かつて「不在のシャルシャーン」が、その身体を微塵に砕く羽目になったように。
その代わり、世界で誰よりも強大で、誰よりも自由であることを許されている。
しかし、キコリはどうだろう。いつもいつでも死にかけて、誰かのために戦って。
その代価に、何を得たのだろうか? 誰でも普通に得られる小さなものを幸せと感じているのは……あまりにも、むごい話ではないだろうか?
「欲しいモノを見つけろ。そのために生きてると言えるようなもんをだ。それがない奴は屍とそう変わらねえ」
「……俺は」
「あるはずだぞ。そうでなきゃ、ドラゴンになんてならねえよ」
欲しいモノ。キコリの欲しいモノ。
分からない。キコリには、それが分からない。欲しかったモノは、もう持っているはずなのに。
だから、キコリは考えるのを。
「考えるのをやめるなよ。欲しがることを諦めるな。それに適応したらお前……俺様はそんなモノを生き物とは認めねえからな」
「分かった。しっかりと、考えてみる」
「そうしろ」
アイアースは、すでに答えを知っている。けれど、言うことはしない。
それはアイアースが答えるべきことではないから。
ドラゴンである「死王のキコリ」自身が……出さなければならない、答えだからだ。
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