そこまでバカだと思われてたのか
「ま、連中が恩知らずなのは確かだがな。そこをどうこう言っても仕方がねえ」
「まあな」
「どうにもくっだらねえ事情もあったみてえだが……」
アイアースは言いながら肩をすくめてみせる。
そう、あの2人は確かに恩知らずだ。しかし問題なのは先程の「スパイ」がどうのこうのという台詞だ。
つまるところ、あのレルヴァとかいう人類共通の敵がいてもなお、人類は団結できていない。
いや、むしろ人類同士で争い疑心暗鬼になっている。
あのレルヴァを見る限り、そういう風にする工作をしているとも思えない。
思えないが……ならば何故、そんなことになっているのか?
「アイアース? どうかしたのか?」
「いや……なんでもねえ」
嫌な予感はする。するが……今言うことでもないとアイアースは言葉を濁す。
確証を得るまでは、全てのものは想像にすぎないからだ。
そんなものをわざわざ口にするのは、とても愚かなことだと思っていた。
「それより、これからどうするかだ。何か考えはあんのか?」
「ああ、ある」
「お?」
意外だ、とアイアースは素直に驚きの声をあげる。ハッキリ言ってキコリは脳みそまでバーサーカーのアホだと思っていたのだが、まさか考えがあったとは思わなかった。もう、本当に……本気で何も考えてないだろうなと信じていた。
正直、ドラゴンの中ではぶっちぎりの人格者ではあるが、頭の出来はワースト1だとすら思っていた。
だから、その口から感心したような言葉が出たのも当たり前だろう。
思わず歓喜の表情でアイアースはキコリの両肩を真正面から掴んでしまう。
「お前……考える頭とかあったんだな。すげえぜ、見直した」
「……えっと、アイアース。もしかしてケンカ売ってるのか?」
「何言ってんだ! 心の底から褒めてるんだぜ! すげえな、全く期待してなかったってのによ!」
「そっか……ありがとな」
「なあに、気にすんな! いやあ、正直脳みそが全部ミョルニルの電撃で焼けてんじゃねえかと心配してたんだけどよ! ハハ、よかったよかった!」
「あー……うん、そうだな」
本当に喜んでいるし褒めているらしいことが伝わってきて、キコリはなんとも微妙な気持ちになってしまう。
(俺、そこまでバカだと思われてたのか……)
まあ、バカであることは否定しないが、いくらなんでも酷くないだろうか?
しかしそこまで無邪気に喜んで褒めてくれていると分かると、これ以上は何も言えなくなってしまう。
「ハハハハ! で? どんな考えがあるんだ?」
「ああ、それだけどな。人間の街に入れないなら、別に入らなくていいんじゃないかと思ってな」
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