カリスマ

「殺せ、とでも言う気か?」

「いいや、言わないさ。調子にのった連中を殺すのは君の自由だけど、それを強要するのは違うからね」

「……」


 なるほどシャルシャーンが胡散臭いというのはこういうところか、とキコリは納得してしまう。

 なんだかんだと言いながら自分の望む方向に進ませようとしているのではないかと、そう考えてしまうのだ。だからキコリは、少しばかりシャルシャーンに嫌味を言ってみることにする。


「そんなに気に入らないならシャルシャーン。アンタがやればいいだろ?」

「ボクがかい?」

「ああ。すでに居場所も掴んでるだろうし、やろうと思えば一瞬だろ?」

「うーん……まあ、やろうと思えば出来るのは間違いないけどね」


 言いながらシャルシャーンは「でも出来ないんだよ」と言い放つ。


「いや、意味が分からない」

「まあ、単純に言うとだね? そっちを滅ぼすのに力を割くと、ボクの本来の役目を果たせないんだよ」

「……なんだよ、本来の役目って」

「世界の監視」

「監視……ああ、確かにそれはシャルシャーンにしか出来なさそうだ」

「そうさ。ボクの目を逃れ得るものはこの世にはなく、その理を外れるものがあるならば、ボクは速やかにその対応に動かねばならない」


 つまり魔王軍とやらはその「対応」の対象ではないらしい。しかしまあ、こうして出てきたということは放っておきたくはないものなのだろうな……とキコリは思う。でなければ、わざわざこうして出てこないだろうから。そして、恐らくは。


「強いんだな、その魔王とかいう奴。シャルシャーンがある程度世界の監視を後回しにする必要がある程度には」

「強いね。何しろ成長が早い。そして厄介だ。幾つかの特殊能力や魔法の融合だろうけど……いわゆるテイミングや魅了に似た能力を持ってる」

「……ごめん。その説明じゃ何にも分からん。魅了ってことは自分に惚れさせるのか?」

「んー……そうだな。どう説明すべきかな」


 たとえば、歴史上有名な王や将軍などは大抵、強烈なカリスマを持つ。

 軍や国家といった巨大な組織を1つにまとめ上げるそれは、その人物に万人を惚れさせる魅力があると言い換えても良いだろう。

 それは本人が地道に積み上げたものであることもあるだろうし、生まれながらのものであったりもするだろう。

 そして時折、敵味方問わずにその能力を発揮する者もいる。あるいは、言葉の通じないモンスターと分かり合う人間がいたりする。

 それは傾国と呼ばれたりテイマーと呼ばれたりするが……とにかく、そうした強力な「力」は確かに存在しているのだ。

 そして「傾国」や「テイマー」は魔力を伴う才能や技術であったりするのだが、つまるところそうしたものは後天的に得られる……ということだ。

 それらを混ぜて1つの能力としたら、どうなるか? 答えは簡単だ。


「超強力なカリスマっぽいものが出来上がる。これを仮に『従属』と名付けようか。魔王を名乗るバカは、そういうのを持ってるのさ」

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