何かに巻き込まれる可能性
「この辺りって……フレインの街にか?」
「いや、外に出る連中を誘ってるって話だが……この街にいるのって基本的にほれ、此処で知恵をつけた奴ばっかりだろう? 今更他のとこになんて、なあ?」
「そういうこった。どうせなら他の野良の連中誘えばいいのにな」
ようやく話が見えてきた、とキコリは思う。
つまるところ「何やらけったいなものを作ろうとしてる連中」に不安を抱いているという話なのだ。
実際、フレインの街は多様なモンスターの街でありバードマンのような飛行できるモンスターに衛兵をさせていたりもするし、街として危険な仕事を発注していたりもする。
しかしながら軍事力を保有している……というわけではない。あくまでも相互扶助のような方式であり、共同生活体であると言ってもいい。町長はいてルールもあるが、独裁というわけでもない。
そこに「軍」を作ろうなどと余所者が話を持ち掛けてくれば、不安になって当然だ。
「そうか……でもまあ、その話に乗らなきゃいいんだからな」
「まあな。その通りではあるんだが……」
「その軍とやらを作って何を狙ってるんだって話だからな」
「え? そりゃあ、デモンからの自衛だろ?」
キコリが言えば2人は「うーん」と悩むような声をあげる。
「まあ、普通に考えればそうなんだけどな」
「ああ、それで済むなら別に好きにやればいいんだけどな」
「もしその軍を作るとかって連中が此処に攻めてきたら……と思うとな」
確かに軍を作ろうなどというのであれば、そういうことを考えている可能性もあるといえばある。
問題は同じモンスター同士でそんなことをする意味があるか、ということだが……キコリの頭に浮かぶのは、あの転生ゴブリンや転生トロールだ。
(あいつらは確か、共通語を話せていた……なら、今回もその可能性はある、か?)
そうだとして、何故「軍」などを作ろうとしているのか?
転生ゴブリンにせよ転生トロールにせよ、何らかの自分の望みを叶えるために動いていた。
ならば軍を作ることで得られる、あるいは軍でなければ達成できない望みとは何なのか?
一体、そいつは何を相手にしようとしているのか?
一体、そいつは何を手に入れようとしているのか?
「なあ、キコリ。お前はどう思う?」
そう問われて。キコリは思っていることをしっかりと言葉にする。
「こっちに迷惑がかからないなら、どうでもいい。でも……軍なんか作りたがる奴だ。俺は、何かに巻き込まれる可能性は……あるんじゃないかと思う」
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