俺様は味方だってことは
「今のがグラウザード……だったのか?」
「おう。昔見た姿とそんなに変わりはねえ。ねえが……あんな無駄に派手なことする奴じゃなかったはずだがな」
アイアースが覚えている限りでは、グラウザードのやることは派手だ。世界の外を超えるとかいう能力はかなり力尽くであるらしく、空が湖に張った氷のように割れるのを見たことがある。しかし、今のはそれではない。どういうつもりかは知らないが、あれでは無駄に世間を騒がすだけだ。
(まあ、影響があったのはこのエリアだけだろうが……どういうつもりだグラウザード……?)
考えながら、アイアースはチラリとキコリを見る。
「らしくない」という意味では、ドンドリウスもそうだった。
ドンドリウスとの顛末は聞いていたが、どうにもドンドリウスらしくないという考えは消えない。
破壊神ゼルベクトとやらの話も聞いたが、そんなものがいるのであれば何故竜神は動かないのか?
それだけではない。シャルシャーンも動いていない。話を総合する限りではシャルシャーンが出向き治めるべき案件だったはずだ。なのに、シャルシャーンは出てこなかった。
あの「何処にでもいる」と豪語し、実際「存在している」シャルシャーンがだ。
つまりアイアースの考える限り、これは。
(キコリに解決させようとしていた……? だが何故だ。破壊神だの生まれ変わりだのが戯言でなかったとして、どうしてキコリにやらせる必要がある。そうだ。もし全部が想像通りだとして、やらせる理由は……)
「チッ!」
「な、なんだよ。気になることがあるなら教えてくれないか」
「気になるっつーか気に入らねえっつーか」
アイアースは言葉を選ぶように「あー……」と言いながら頭を乱雑に掻き、やがて大きく溜息をつく。
「キコリ。お前はそのままでいろ。それでたぶん、全部上手くいくんだろうよ」
「えーと……ごめん。全然分からん」
「俺様だって分かってるわけじゃねえし想像だよ。でもまあ、たぶん。たぶんだがな……」
「ああ」
「あー……いや、やめとくか」
「なんだよ。気になるぞ」
「俺様が一々言うこっちゃねえ。だがまあ、俺様は味方だってことは覚えとけ」
言うべきではないだろう、とアイアースは思う。
どういう形でかまでは分からないが、たぶんゼルベクトは来る。
そしてその時のために何かを竜神とシャルシャーンは準備している。
キコリは勿論、他のドラゴンたちも蚊帳の外にされているのだ。そのくらいに確証のない、あるいは秘匿しておきたい話なのだろう。
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