平和な暮らし
ドラゴン、『創土のドンドリウス』との戦いから数日が経過した。
キコリたちが連れ帰ったドレイクたちもすでにフレインの町に馴染んでおり、共通語を覚える通常種のドレイクも増加していた。
その巨大さ故に既存の町構造には合わないのだが今後を見据え「巨大種用」の区画の建築計画も始まっており、ドレイクたちもそれぞれ遠くへの素材確保に付き合う輸送業としての生計を立て始めており、その適応力に驚くべきなのかフレインの町の最終目的に沿う懐の深さに感心するべきなのかはキコリには分からない。
とにかく新しい住人を加え、ドンドリウスの建築支援を得るという計画は頓挫しながらもフレインの町は今日も拡大と発展を続けている。
恐らくはこのエリアがモンスターの町としての本領を発揮し始めるのはまだまだ先なのだろうが……いずれ国の規模まで発展した時、此処が首都になるのは確実だろうとキコリは考えていた。
「そんな場所に家まで貰っちゃったからな……人間だった頃はそんなもの、夢のまた夢だったのにな」
「そうなの? でもあの女は持ってたじゃない」
「あー、アリアさんの家は一応『貸与』って形らしいぞ。ギルド職員だから」
「ふーん、世知辛いのね」
「防衛都市が特殊だったんだと思うぞ。あそこって町という形の軍事基地なんだし」
とはいえ他の町であっても家は中々持てるものではない。余所者に厳しいのは人間社会の常であり、このまだ発展途中のモンスター社会が特殊とも言えるのかもしれない。
まあ、ともかく……そんな事情で、キコリたちが今滞在しているのは今回の仕事の報酬として与えられた一軒家だった。
然程大きいわけではないが、キコリにオルフェ、それにドドと。ついでにアイアースが暮らしても全く問題のない広さだ。
そう、あれからアイアースもなんとなくこの家に暮らしていて、キコリが出かけるならばついていくが、それ以外は基本暇そうに家で寝ていることが多い。
ドドは鍛冶屋で腕を見込まれたようで、ここ数日は毎日出かけているが。
「平和ね……」
「まあな。考えを整理するまで留まってくれって言われたから此処で暮らしてるけど。久々に平和な暮らしってのをしてる気がする」
「いや、アンタはあたしの知る限りじゃ平和な暮らしはしてないわよ? 次から次へと厄介ごとに巻き込まれてんだから」
「好きで巻き込まれてるんじゃないんだがなあ」
「好きで巻き込まれてるようなら目を覚ませって揺さぶってるところよ」
確かに思い返せば、少しばかり急ぎ足で生きてきたかもしれない。これまでのことを考えれば、キコリとしてもそれは納得してしまうところだった。
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