そこからの帰路

 そこからの帰路は、とても順調なものだった。

 以前戻った時のようにドレイクは一緒ではないが、キコリとオルフェの2人で行くのも悪くはない。

 互いに気心が知れた相棒であるし、オルフェは元の大きさに戻って飛ぶかキコリの頭に乗ればいいだけの話なので、キコリのペースで歩いて行けるからだ。


「今回は最悪だったけど、思い返すと今まで会ったドラゴンも変なのばっかりだったわね」

「そうか? ヴォルカニオンは良い人だっただろ」

「もう何回も言った気がするけど、アンタのそのヴォルカニオン好きは何なの……? ヴォルカニオンの時だけ目が曇るの?」

「え、そこまで言うか……?」

「言うわよ。アイツだって目につく生き物は全部焼く系のドラゴンじゃないの」


 オルフェからしてみればヴォルカニオンのヤバさは今まで会った中でも上位なのだが、キコリからしてみればそうではないらしい。

 まあ最初の「出会うと殺される」をキコリは何の苦労もなくスルーしたのだから、キコリの中でヴォルカニオンが印象が良いのは仕方ないのかもしれない……というのはオルフェとしても理解は出来るのだが。ユグトレイルには試練とやらに叩き込まれたしシャルシャーンには思いっきり迷惑をかけられたし、ドンドリウスは「ああ」だった。


「あ、待って? てことはもしかしてキコリ。アンタがマシだと思う順に並べると2番目って」

「アイアースだな」

「やっぱり……まあ、確かに思ったより良い奴なのは認めるけども」


 アレはアレでヴォルカニオンと同じで「キコリ」というレンズを通して見える類のモノのような気もオルフェにはするのだが……まあ、一々言うことでもない。

 事実、シャルシャーンがいたせいだろうとは思うがドラゴンブレスを撃ってきたことをオルフェは忘れてはいない。

 おそらく……おそらくだが、アイアースがドラゴン間で「話にならない奴」と思われているのはそれなりに根拠のある話であって、しかし同時に譲れぬエゴを根底に持つドラゴン同士の問題であるようにもオルフェには感じられた。

 そういう意味で、アイアースがキコリに会いに来たのはマトモにコミュニケーションをとっていい相手か見極めに来た……と考えると、凄いしっくりくる部分はある。


(妙に親切なのも、その辺のアレだとすると納得いくのよね……ま、これも言う必要はないけど)


 今回の件でオルフェも思い知ったが、ドラゴンという生き物は厄介な連中の集まりだ。どいつもこいつも厄介な性格をしていて、それでいて最強だからタチが悪い。キコリというドラゴンの誕生は、本気で奇跡であったようにオルフェには思えてしまうのだ。

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