ドラゴン界のクズ

「神、か。話が大きくなったな。でもまあ、分からないでもないか」

 

 伝説の時代、歪みなどなかったはずの時代にミレイヌを騙し「正常ではない転生者」を送り込む道筋をつけるに至ったのだ。それほどの存在であると考えるのが自然ではあるのだろう。

 しかし、そんな「神」が結局は倒され、それでも人間に……キコリに転生したというのは、確かにドンドリウスでなくとも警戒したくなる話ではある。ある、のだが。


「俺は世界を滅ぼしたりなんかしない。その力が集まってるとかって話は確かなのか?」

「確かだ。私は大地と繋がっているが故にそれが分かる。シャルシャーンとて似たようなものを感じているはずだが」

「そのシャルシャーンは俺が強くなる手伝いをしたぞ?」

「何……?」


 キコリの言葉にドンドリウスは考え込むような様子をみせるが、キコリとしてもそれに付き合う気はもうない。


「ドンドリウス。もしかするとアンタは今の世界の歪みに影響されてたんじゃないか?」


 キコリはアイアースの言葉を思い出す。あの時、アイアースはドンドリウスが本物か疑っていた。

 流石に此処までの力を見せられて偽物とは思わないが、それでもドンドリウスが「大地と繋がっている」というのであれば、大地の記憶が「デモン」を作り出している現状からして、ドンドリウスに影響がゼロであると考えるのは少しばかり楽観が過ぎるはずだ。

 そしてキコリのその言葉は、ドンドリウスにとっても否定できないものであるようだった。


「……私が、か。有り得ない話ではない。しかし、そうだとすると……」

「色々と考えることが出来るのは、アンタのいいところだと思う。考えすぎて逆に頭固いけどな」

「……そうか」

「正直、俺はアイアースの方がいい奴だと思う。他のドラゴンは皆悪く言うけどな」

「アイアースか。アレについては言及を避けるが……モンスターの集まる場所に向かっているようだ。恐らくは君の言っていたモンスターの町だろう」


 そんなものまで分かるのか、とキコリは言いたくなる。やはり町から離れたのは最善の判断だったのだろう。町を戦場にしたら、間違いなく更地になっていたに違いない。


「ドンドリウス。もう1度聞くけど、フレインの町に力を貸す気は」

「ない。私は今からしばらく眠りにつくからだ」

「……一応聞くけど、理由は?」

「私の中に影響している何かがあれば、それを取り除く。その為の眠りだ」


 つまり瞑想のようなものだろうか、とキコリは思う。それがどう「影響を取り除く」ことになるのかまではキコリには分からないが、ドンドリウスが出来るというのであれば出来るのだろうとも思う。


「次に私が目覚める時にどんな状況になっているかは分からないが……出来れば、君がゼルベクトとして再度世界の敵になっていないことを祈ろう」


 その言葉を最後に、ドンドリウスの姿は土になって消えていく。


「……和解できたってことでいいんだろうな。たぶん」

「最後の最後まで自分の間違いを認めなかっただけでしょ? ドラゴン界のクズよアイツ」


 まあ、確かにその通りだとはキコリも思う。しかし元々ドラゴンはエゴを芯に持っている生き物だ。今までのドラゴンがたまたまキコリと敵対する理由がなかっただけ……とも言える。理由さえあればシャルシャーンの一部の時のように、いとも簡単に敵対するのだろう。


「ま、その辺はいいさ。それよりアイアースとドドがフレインの町に戻ってくるんだ。俺たちも行かないとな」

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