勝手に自己完結
当然のようにオルフェはキコリを受け止めるべく飛ぶ。
けれど、間に合わない。巻き込まれないように離れていたのが災いした。
ただでさえ今のキコリは限界を超えてボロボロだというのに、落下ダメージに耐えられるはずがない。それでも、オルフェは手を伸ばして。
しかし、そのオルフェの手が届く前に地面から伸びた巨大な土の手がキコリを受け止め地面へと戻っていく。
「は!? え……!?」
オルフェはその「手」が戻っていく先を見て驚愕する。そこには先程キコリが倒したはずのドンドリウスが人間の姿で立っていたのだ。
まさかアレも土人形ということなのだろうか? けれど、本体を倒したというのにどういうことなのか?
「ドンドリウス……!」
地面にゆっくりと降ろされたキコリを庇うようにオルフェは降り立ち、いつでも魔法を放てるようにドンドリウスを睨みつける。
しかし……ドンドリウスは構えもしない。そんなものをしなくてもオルフェ程度問題ないとでも言いたいのだろうか。オルフェは嫌な汗がにじむのを感じていた。ドラゴンそのものに恐怖を覚えることはなくなっても、勝てるなどとは微塵も思えない。
それに、まさかアレでも生きているなどとは信じられないというのがオルフェの本音だ。
ハッキリ言ってフェアリーケインを本気のドンドリウスが防げる以上は、オルフェに打つ手はない。
ないが……ゆっくりと口を開いたドンドリウスから紡がれた言葉は、なんとも意外なものだった。
「もういい」
「……は?」
「確かめるべきことは確かめた。それについてはまあ、問題は無いだろう」
興味を無くしたようなその表情に、オルフェはムカムカとした感情が湧いてくるのを感じる。
そして妖精はたとえ妖精女王であろうと、そういうものを我慢するのは物凄く苦手であった。
だから、オルフェは心のままにドンドリウスを罵倒する。
「アンタ馬鹿でしょ。グチャグチャ自分の頭の中でロクでもないこと考えて殺しに来て、何度撃退されても襲ってきて。何を確かめたか知らないけど、問題はアンタのそのどうしようもない頭の中だって分かってんの? シャルシャーンよりタチ悪いわよアンタ。アイアースより人を見る目ないし、ユグトレイルよりコミュ力ないし。ヴォルカニオンより話聞かないでしょ。アンタのいいところ、何処にあんの? ドラゴンじゃなかったらただのクズじゃん」
「なっ……妖精女王、君は……!」
「何よ。1つでも事実と違うこと言った?」
「うぐ……」
黙り込んでしまったドンドリウスにフンと鼻を鳴らすと、オルフェはどっかにいけと言わんばかりに手をヒラヒラと振る。
「どうせまた勝手に自己完結するんでしょ? 邪魔。アタシ忙しいのよ。どっか行ってくれる?」
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