飛べないドラゴン
「不滅……」
「騙されんじゃないわよ。頭を吹っ飛ばして死なないってことはアイツもコア吹っ飛ばさなきゃ死なないタイプってだけの話よ」
「それはどうかな? たとえばシャルシャーンにそんなものがあると思うかね?」
不在のシャルシャーン。確かに以前その無数に分かれたモノの1つを倒した時、魔石なんてものは出てこなかった。
ゴーストを倒しても魔石は出るのに……だ。つまりシャルシャーンにはそんなものはない、というのが答えになる。
「さて。ではまずは返礼といこうか」
「!? 拙い……オルフェ!」
オルフェがキコリを抱え、その場を飛んで離脱する。ドンドリウスの開いた口の中の輝きを見れば、当然の行動だ。
アレは間違いなくドンドリウスのドラゴンブレス。あんな巨大なサイズから放たれるものがどれだけの規模になるか分かったものではなく、とにかくオルフェはキコリを抱えて全力離脱する。
そして結果から言うと、それは正解であった。輝くドラゴンブレスが過ぎ去った後。其処にあったのは、無慈悲に削れた大地。先程までキコリたちがいた高台も、ほぼ消え去っていた。
あんなものを受けては、余波だけで消し飛びかねない。ギリギリで躱すとか、そんなナメたことを出来る威力ではないのだ。
「避けたか。しかし飛べないドラゴンとはな……フフ、思ったよりも無様なものだ」
「ああ、確かに俺は飛べないさ」
飛べない事実をどう言い繕っても仕方がない。飛べないのだから。
キコリ自身が、そんなことを実現できる才能がないのだ。これはもうどうしようもない。
それでも。そうだとしても。たとえキコリには空を飛べる翼はないのだとしても。
空へ行ける手段は持っていた。かつて「仲間」を脅えさせた、その魔法は。
「オルフェ! 俺を投げてくれ!」
「え!? もう、知らないからね!」
何をするかは分からなくても、何かをするというのであればとりあえずオルフェはキコリを信じた。
無駄な迷いが勝機を逃す。これがそういう戦いであると知っているし、キコリのフォローが自分の役目だと考えているからだ。
だから、オルフェはキコリを空中で迷いなく投げて。そのままであれば当然のようにキコリは自由落下する。そう、そのままであったならば。
「ミョルニル」
投げられたその瞬間唱えた言葉、その魔法。ミョルニルは投げられたキコリ自身を強化し、その速度を強化しドンドリウスへと迫る。
「愚かだ。そんなものは、こう……」
ドンドリウスの放った柱のような太さの石の槍はしかし、身体を捻って躱したキコリの「居た場所」をすり抜けて全く違う何処かへ着弾していく。
「武器じゃないんだ。当然避けるに決まってるだろ」
ドンドリウスへと「着弾」したキコリはそのままドンドリウスへと電撃を流し込んで……元の位置へは戻らない。自分を引き戻そうとするミョルニルの効果を維持する魔力をもキコリは1つの魔法へと注ぎ込んだからだ。
そう、それは。
「ブレイク」
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