普通ではないことを為すための魔法
そう、文字通りの完封だ。たとえドンドリウスの作った土人形が相手であるとしても、ドラゴンであるドンドリウスが作り、切り札を温存したとはいえキコリと互角の戦いをした相手なのだ。
それを完封するというのは普通ではない。普通ではないが……その普通ではないことを為すための魔法こそがフェアリーケインなのだ。
「くそ、馬鹿な……組成を変える私に対応してくる……だと!?」
ドンドリウスとて、ただやられているわけではない。素材にコアの位置、その他様々なものを組み換え強化し対応しているというのに、何の甲斐もなく土人形が倒されているのだ。
(この魔法……! どれだけ緻密な構成で組んでいる!? 魔力もだ。相当量の魔力を注ぎ込んでいる……!)
そう、フェアリーケインは見た目には「ただの光球」だ。こんな発動が地味な魔法はそうはない。
しかし1度発動すれば相手に合わせて最適な光線を込めた魔力が切れるまで自動で発射する、一撃必殺を連発するという魔法史がひっくり返りかねない魔法なのだ。
オルフェが妖精というだけではなく、妖精女王だからというわけでもなく。
キコリの隣に立たんとする一念が生み出した「オルフェの必殺技」なのだ。こればかりはドラゴンの力をもってしても真似できるものではない。
そしてドラゴンの中では非常に知識欲の高いドンドリウスは、それをしっかりと見抜いて。だからこそ思う。
「……美しい。その魔法は賞賛に値する」
「そう? ありがと。ちっとも嬉しくないけどね」
フェアリーケインの光線が再度ドンドリウスの土人形を貫き破壊して。それを最後に、ドンドリウスの土人形が出現しなくなる。
10秒、20秒、30秒。それ以上たってもドンドリウスの土人形は出てくる気配はなく、万が一オルフェが見逃してもフェアリーケインは見逃さない。
「……諦めたのかしら」
「どうだろうな。それにしても……オルフェのアレはやっぱり凄いな」
「アレじゃなくてフェアリーケイン。ま、なんとか通じて良かったわ」
「だな。これで話し合いに応じてくれればいいんだけどな」
「そう簡単にはいかな……」
オルフェが言いかけたその時。フェアリーケインが今までの比ではない程の、それこそ地面が砕け大穴を開けようというほどの超威力の光線を放つ。
残った魔力の全てを使い切る一撃が放たれたその先。そこには無傷のドンドリウスが立っていた。
「話し合いか。少ししても良いという気分になっているよ」
「そうなのか!? それなら」
「オルフェ、だったか。羽虫と断じたことは私の浅慮であった。謝罪しよう」
キコリの言葉を遮り、ドンドリウスはオルフェに視線を向ける。
そう、ドンドリウスはキコリを見ていない。キコリと「話し合い」をする気はゼロだということがよく分かる。しかし、それなら一体何をしに来たのか?
「オルフェ。ゼルベクトを殺したまえ。それを放置するのは君にとっても良くないことだ」
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