妖精の如き羽虫
「ああ、確かに俺が殺したよ。でもお前は、そういう反応なんだな」
「確かに君を殺さなかった奴を責めるべきかな?」
「……いや、いいよ。そうだな、なるほど。色々と分かった気がする」
「はて?」
……別に、キコリはソイルレギオンの友人でも何でもない。
むしろ最初から最後まで敵であったし、殺されかけた相手でもある。
同情すべき点もなければ、もう1度会ったとしてもう1度殺し合いになる自信もある。
ただ、その上で。1つ理解できたことがある。
「お前よりソイルレギオンの方が理解できたし好感も持てるよ、ドンドリウス。俺は、お前が嫌いだ」
「私も君が嫌いだよ、ゼルベクト。理解する気もないから、さっさと死にたまえ」
「俺はキコリだ」
「いいや、ゼルベクトだよ君は」
キコリの背後から巨大な土の腕が現れ、キコリを掴もうとして。
「ブレイク」
破壊魔法ブレイクの一撃で、キコリに触れようとした腕が微塵と化す。そしてキコリはそのまま走り出し、ドンドリウスを両断して。キコリの真横に出現したドンドリウスの剣をキコリは鎧で弾き飛び退り、そのキコリをドンドリウスが出現させた無数の矢が降り注ぎ襲う。
「くっ!?」
たかが矢、ではない。1本1本がドラゴンの力の籠った必殺の一撃。だからこそキコリは全力で魔力を全身の鎧と斧に流し、その全てを防ぎきる。
そして、その瞬間を狙いドンドリウスの蹴りがキコリの横腹に突き刺さる。
「ぐう……っ!?」
ゴロゴロと転がったキコリを地面から生えた神殿の柱のようなものが追撃し空へと弾き飛ばす。
そして当然だが、飛べないキコリでは空中ではどうしようもない。だから、ドンドリウスは余裕の表情で次撃を用意する。
「さて、こうだったな?」
ドンドリウスは剣を地面から出現させると手に取り「ミョルニル」と唱える。
当然のように剣は電撃を纏い、それをドンドリウスは振り被る。
「では、さよならだ」
「アンタがね」
その言葉にドンドリウスは動きを止める。そういえば、一緒にいたあの妖精……いや、妖精女王。
先程から見かけなかったアレは何処に?
「フェアリーケイン」
空高く浮かぶ光球から放たれた光線がドンドリウスの頭部を貫き、元の土へと戻す。
次に現れたドンドリウスも、その次のドンドリウスも、その次の次の次の次も。
完成したフェアリーケインはドンドリウスを次から次へと貫き土塊へと戻していく。
「お、おのれ!」
言いかけたドンドリウスを、土塊に戻して。
「妖精の如き羽虫が、この私に……!」
悪態をついたドンドリウスを、土塊に戻す。
「傲慢ね。流石はドラゴン」
ずっとドンドリウスの視界の外を飛んでフェアリーケインを構築していたオルフェは、小馬鹿にするような表情を浮かべながら大きくなり、衝突ギリギリでキコリをキャッチする。
「その傲慢の隙を突かれた気分はどう? アンタ今、その羽虫に完封されてるのよ?」
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