人間の醜悪さの塊のような
「二番? なら一番があるのか。何故出さない」
「さて、な!」
キコリが投げた斧をドンドリウスは「愚かな」と吐き捨てながら弾いて。しかし、投擲体勢に入っているキコリを見て驚愕に目を見開く。
「グングニル!」
爆音が響き、ドンドリウスを中心に大爆発が起こる。勿論、それでドンドリウスが死ぬはずもない。ないが……その土煙が晴れたそこには、ドンドリウスの首を跳ねようと斧を振るうキコリと、それを剣で防ぐドンドリウスの姿があった。
「躊躇なく首を刎ねに来るか……!」
「殺すつもりでないと勝てる気がしないんでね……!」
「ククッ、納得できる!」
ドンドリウスの足払いにキコリは体勢を崩して、瞬間ドンドリウスはキコリの斧を弾き飛ばし剣で刺し貫こうとする。だがその一撃をキコリは身体を捻って無理矢理回避すると、伸びきったドンドリウスの腕を掴む。
「ブレイクッ!」
「ぬっ!?」
破壊魔法ブレイク。その一撃がドンドリウスの中を伝わっていき、アッサリとその身体が微塵と消えて……土の塊がその場に落ちていく。
ゴーレム。そう感じたキコリの感覚は正しかったというわけだが、つまるところコレは偽物だった。ならば本物は何処に? その疑問を解く前に聞こえてくるのはドンドリウスの声。そして……先程と同じように盛り上がった土がドンドリウスを形作る。
「なるほどな。今のが『一番』というわけだ……実に恐ろしい」
「いいや、違うさ」
「何?」
「ドンドリウス。お前のソレは、魔法だな?」
ドンドリウスに「答え」を伝えることはなく、キコリはそう告げる。
そう、細部こそ違えどキコリは今ドンドリウスがやっていることに覚えがあった。
それは他でもないソイルレギオンの使った魔法。あの「特別な生きている鎧」を動かしていた魔法だ。
一度見たからこそキコリにも分かる。これは、同じような魔法だと。
「ソイルレギオンが使ってたものに似てる。もしかすると同じなのかもしれないけどな」
「……ソイルレギオン」
その名前を、ドンドリウスは僅かに目を細め反芻する。
ソイルレギオンは自分を「創土のドンドリウスに従属するもの」と言っていた。
ならば……ドンドリウスがソイルレギオンに魔法を教えた可能性だってある。キコリはそう考えていた。
「懐かしい名前だ。あの人間の醜悪さの塊のような、おぞましき怪物。そうか、何処ぞで君と会って……まあ、恐らくは殺されたということか」
「おぞましき、怪物……?」
「ああ。おぞましいだろう? アレは人間がドラゴンを作ろうとした結果の代物だ。暴走されても迷惑故、しばらく監視下に置いたが……色々とあってはぐれてね。しかし安心したよ。きちんと死んだのだな」
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