今後のこと

「今後のこと、か」


 衛兵隊長は呟くと、何処となく遠い目をする。「今後のこと、かあ……」と再度呟く始末だが、キコリが疑問符を浮かべていると大きなため息をつき始める。


「ドラゴンを敵に回したと聞いて、俺は正直絶望したがね。しかしまあ、そうしてばかりいるわけにもいかん、か……」

「流石は衛兵隊長。そうでなくてはいけません」

「うおっ!? 執事殿!? い、いつからそこに!」

「先程来たばかりです」


 悪魔であり執事、アウルが背後に現れたことに衛兵隊長はあからさまに驚き動揺するが、出てくるところが見えていたキコリとしては驚くことでもなかった。

 それよりも執事アウルが現れたことで、話が進むことを期待していたのだ。そしてその期待に応えるように、執事アウルはキコリへと視線を向けてくる。


「さて。ドレイクたちは移住希望とのことですが」

「……さっきからずっと居たんだな?」

「いいえ、先程来たばかりですとも」


 笑顔で言う執事アウルだが、まあいつ来たかなんていうのはどうでもいいのでキコリも突っ込みはしない。そんなことよりも重要な話があるからだ。


「聞いてたなら話は早い。ドレイクの移住、お願いできるか?」

「ええ。問題ございません。この町はどんなモンスターであろうと受け入れます」

「そうか。それなら安心……」

「ですが、ドンドリウスの件については別です。此処を狙われれば、余波だけで消し飛びます」


 まあ、それはそうだろうとキコリも思う。ドンドリウスが精魂込めた城と町がアイアースの一撃で無惨に消し飛んだのだ。ドンドリウスに同じことが出来ないなど、誰が言えるだろうか?


「可能な限りの支援は致しますが、此処以外を戦場にして頂きたいものです」

「それは俺もそうしたいけど。そんなのどうすればいいんだ?」

「問題はございません。ドンドリウスは大地と繋がっているという話です。なれば貴方を探すなど造作もないでしょう」

「大地……ねえ」


 なんともズルい能力を持っているとキコリは思う。ユグトレイルもそうだったが、どうにもドラゴンは凄い能力を持っているのが普通なのだろうか?

 キコリにはそんなものはないだけに、少しばかり羨ましい部分はある。何しろ「人間の形をしている」という部分に関しても他のドラゴンも人型になれるし、アイアースなどは人間の魔法も即座に覚えた。むしろ変身できない分キコリのほうが不器用という話になるのだが……まあ、今更だ。それよりも、今は考えるべきことがある。


「まあ、話は分かった。そういうことなら良い場所があるから、そこに向かってみるさ」

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