大海嘯の影響
風を切って走る、という言葉がある。グレートドレイクはまさにそれであり、背中に乗っていたキコリたちは景色が後ろに流れていく光景をじっと見ていた。
その周囲を走っていく大小様々なドレイクたちも素早く、種類によってはグレートドレイクより速く走る為、先頭集団の小型ドレイクの背後をグレートドレイクが走るような形になっていた。
「凄い速いな……」
「マトモに戦ったら相当強かったと思うわよ」
「だな」
ドラゴンロアで実質先手をとってからの一撃なのだから、戦法としては比較的ズルいのだが……キコリとしても別に好きで命をかけているわけではない。簡単に勝てるのであれば、その方が良いに決まっている。
「ドレイクの戦い方。集団で戦うものだ。見ていろ」
グレートドレイクの言葉が響いて。一行の進路に中型ドレイクが現れ走ってくる。
デモンドレイクだ、と。キコリがそう気づいた時にはすでに先頭の小型ドレイクの集団が襲い掛かっている。
足を中心に四方八方から隙のある場所を狙って食らい付き、引き倒してトドメを刺していく。
まるで狼か何かのような戦法だが、牙を使った戦法は昔から変わらないといったところだろうか?
「うわ、エグいな……」
「アンタ、前はあんなもんだったでしょ。流石に噛んだのは記憶にないけど」
「……やった気もする。いや、どうかな……勝つ為ならなんでもやったからな……」
少なくとも金的はやったな、などとキコリは呟いているとオルフェは軽く肩を竦めてみせる。
「ま、別にいいわ。今のアンタもそんなに変わんないし」
「そうかな。そうか……? そうかもな……」
「何処までいってもアンタはアンタってことね」
褒められてるのか分からずキコリは軽く頬を掻くが、その間にも転送門が見えてくる。
最初の小屋から比較的近い転送門だが、位置的にはこれが正解である気がする。
「そういえばあの小屋、なんだったんだろうな」
「知らない。どうでもいいけど」
まあ、知ったところでどうにもならない話ではある。あるが……僅かな時間でも、休むことで助けられた場所だ。何処の誰かは知らないが、それを作った人に向けての感謝を僅かに捧げて。
そのままドレイクとキコリたちは転移門に突入していく。そこにあったのは、大海嘯の影響か無惨に壊れた廃墟だったが……それを見たグレートドレイクが「あれか?」と聞いてくる。
「いや、違う。そのまま真っすぐ行ってくれ」
「ああ」
あの立派な城も町も、大海嘯の影響だろう……無惨に破壊されている。
あそこにドンドリウスが舞い戻っているかは分からないが、少なくとも今……あそこを探索してみる気は、キコリにはなかった。
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