万が一の可能性でも
「導き……そんな大層なものでもないけどな」
「つーか、どっちに行けば辿り着くか分かんないでしょうが。流されてきたんだから」
「あー……それもあったな」
そもそもキコリたちはアイアースの大海嘯で流されてきたのだ。何処からやってきたのか、正確な方角を覚えているわけではない。東西南北のどれかが正解ではあるが、間違えれば更に迷う。自分たちだけならともかく、ドレイクを連れている状況でそれは望ましくない。
「出来ればドドも迎えに行きたいけど……何処にいるか分からないんだよな」
「無事だと信じるしかないわね。あたしが無事だったんだからたぶん大丈夫だとは思うけど」
「……だな」
ドドはオークから進化したハイオークだ。タフさでいえばオルフェの比ではない。流されたくらいでは死んではいないだろう。それに……だ。
「アイアースがこっちに居ないっていうのは、ドドの方に行ってると思うんだよな」
そう、アイアースは他のドラゴンの評価とは違い「粗雑だが気を遣える」ドラゴンだった。
つまりキコリとオルフェのところに居ないのであればドドの方に行っている可能性が高い。何しろ、アイアース自身は自分の大海嘯で流されるはずがないからだ。あの中で、アイアースだけは迎える先を選べる立場にあった。
「確かにね……となると、あたしたちはなおさらフレインの町に向かうべきね」
「ああ。ドンドリウスがフレインの町をどうこうするとは思えないが、アイアースの言ってたことも気になる」
あの時アイアースはドンドリウスが本物かどうか疑っていた。
ドラゴンを詐称できるようなものがいるのかどうかは不明だ。何しろあの時、会話する前はアイアースも「あのドンドリウス」を本物と判定していたはずだ。
つまりドンドリウスが偽物であるならば他のドラゴンを欺けるほどの「何か」であるということになる。
そしてそうであるのならば、キコリには本物か偽物か分かるはずもない。
だが、ただ一点。あのドンドリウスは、フレインの町のことを知っている。
もしドンドリウスがドンドリウスではなく偽物であるならば、フレインの町のことを教えたのは悪手だった。
「急ごう。万が一の可能性でも、防げるなら防ぐべきだ」
そう、フレインの町はモンスターの希望だ。もしそれが襲われるような結果になったのならば、悔やんでも悔やみきれはしない。
「そういうことならば乗れドラゴン。方角を示せば、全力で進もう」
「助かる」
グレートドレイクの提案にキコリは即座に頷き、オルフェと共にその背中へと飛び乗る。
「よし、まずは……あっちだ!」
キコリが自分が目覚めた小屋の方向を指差せば、ドレイクたちはそこへ向けて走り出す。
それはキコリたちが歩くよりは余程速い……馬をも超える、そんな速度だった。
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