意味のある単語

 そして、そうと決まれば話は早い。キコリは早速、次から次へと声をかけていくことにする。

 デモンを可能な限り早く片付け、残ったドレイクに話しかける。

 結局のところコレしかないのだが……どのドレイクも逃げてしまって話にならない。

 上へ下へと駆けまわり、今のところ逃げられ率は100%である。


「ギエエエエエエエエ!?」

「あ、また逃げた!」


 走って逃げていくドレイクを追わずに、キコリは小さく溜息をつく。


「オルフェ。やっぱり何か方法を考えるべきなんじゃないか? このままじゃ全部のドレイクに逃げられることになりそうだ」

「何言ってんのよ。アンタにそんな器用な真似できるわけないでしょ。あたしに考えがあるからこのままやりなさい」

「ああ、分かった」


 オルフェに考えがあるというのであれば、キコリはそれに乗る。そういう風に2人の信頼関係は醸成されてきている。

 だからこそキコリも楽に斧を振るえるというものだが……キコリは川沿いを歩きながら「そういえば」と声をあげる。


「ワイバーンの時も、こんな感じの場所だったな」

「そうかもしれないわね。雰囲気は似てるわ」

「あの時は俺は隠れて不意打ちするしかなかった。でも今は違う」

「あれはあれで楽しかったけどね。充実してたわ」

「俺もだ」


 オルフェにキコリは二ッと笑う。あの時と今で違うのは……デモンではないドレイクは殺さないこと。まあ、キコリにはこれでどうやってドレイクの説得に繋げていくのかはサッパリ分からないのだが……1つだけ、分かることはある。


「オルフェ」

「そうね。コレを待ってたわけだけど」


 先程から、何をするわけでもなくキコリたちについてきていた巨大なドレイク。

 他のどのドレイクよりも狂暴そうな顔と身体をしたソレは、先程から妙な声をあげていた。

 ガ、とかイイエオ、とか。何の意味も持たない「言葉」の羅列は、とある可能性を示していたが……それがついに、意味のある単語を発した。


「どらごん」


 ドラゴン。確かにこのドレイクはそう言った。そしてそれが何を意味しているか、いや……誰を意味しているか、明らかだった。このドレイクはキコリを見て「ドラゴン」と言ったのだ。


「つよいもの、どらごん。どらごんに、あいさつもうしあげる」

「……凄いな。俺たちの会話から共通語を覚えたのか」

「大体こんなもんよ。あたしはもっと早かったけど」


 オルフェが微妙にマウントを取りに来るが、実際キコリには無理であるだろうことだ。

 逃げずについてきているとは思ったが、このドレイクは間違いなく……キコリとの会話をするつもりなのだ!

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