とびっきりの殺意を
「え? 出来る奴もいるかもしれないけど……どうかしら。望み薄よ? 人間の言葉なんだし」
「まあ、そうかもしれないけどな。やってみる価値はあると思うんだよな」
「話せたらどうなるってのよ」
「……フレインの町に連れて行けないかなって思うんだよ」
オルフェは言われて口をパクパクさせた後、額を押さえ「アンタは……」と絞り出すように声をあげる。
「確かにアレを連れて帰れば相当な戦力アップになるでしょうけど。どう共存すんのよ。町に入れないでしょ」
「まあ、そうだけどやりようはあるだろ」
「やりようって……」
「フレインの町の目的を考えれば、ドレイクの加入はいいこと尽くしだ。アレは最悪に備える町なんだからな」
「そうかもしれないけど……いや、まあ別にいいわね。考えるのはあたしたちじゃないし」
「そういうこと」
ニヤリと笑うキコリに溜息をつくと、オルフェは元のサイズに戻る。
まあ、確かにキコリの言う通りなのだ。多少のデモンモンスター相手ならドレイクはものともしない。その上機動力が高いものが多い。
町の防衛という点で、これ以上の適任となればそれこそワイバーンくらいのものだろう。
「よし、行くか」
「はいはい」
言いながらキコリたちは、手近な場所で争っているドレイクたちの下へと走っていく。
2本足の高速移動型のドレイクたちはどうやら別の一団と争っているようで、パッと見た限りではどちらが本物でどちらがデモンか分からない。
だからキコリは斧を取り出し、すうっと息を吸い込む。
そう、判別する方法は意外に簡単だ。これまで戦った限り、デモンは誰彼構わず襲ってくる。
だから、判別するには……思いっきり脅してやればいい。本気の殺意を込めて、ドラゴンの魔力を込めて。
お前を殺してやると、絶対に殺してやると。そんなとびっきりの殺意を込めて。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
叫ぶ。吼える。キコリのドラゴンロアが響き渡る。
響き渡るドラゴンロアに、ドレイクたちの反応は真っ二つに分かれた。
脅えたように身をすくませる一団。そして身をすくませつつも、濃厚な殺気を向けてきた一団。
まるでそれしか持っていないような、そんな殺気に。
「ああ、分かったよ。デモンはお前らだ」
キコリは斧を構え、思いきり飛び掛かる。万が一を考えミョルニルは使わない。
代わりに斧に魔力を通しドラゴンの爪に相応しい切れ味へと変えて、思いきり首を跳ね飛ばす。
1体、2体、そして最後の3体目。全てのデモンドレイクを殺し切ったキコリは、残ったドレイクへと笑顔を向ける。
「話をしたいんだけど、ちょっといいか?」
可能な限り友好的な笑みを浮かべたキコリに……ドレイクたちは、我先に逃走を選んでいた。
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