ドレイク

 そうして再び持ち直したキコリはオルフェに此処までの話を聞いて、周囲をゆっくりと見回す。

 ドンドリウスの刃に貫かれた後、アイアースが起こした大海嘯。

 それはどうやらアイアースだけではなく、ドドとも離れる結果になってしまったようだ。


「あの2人は大丈夫かな、心配だな」

「アイアースは何も心配要らないでしょ。ドドもなんだかんだタフよ。どうにかなると信じましょ」

「……だな」


 そもそも此処が何処かも分からない。どうやら何処かの小屋の中のようだが、何処かの集落の小屋にしてはボロボロだ。石の壁や床などは残っているが、朽ちた家具類が残されているところを見ると廃屋ではあるのだろう。ドアが形を残しているのは、まさに奇跡だ。


「オルフェ、お前ならもうこの辺りを探索したんだろ? どんな場所なんだ?」

「とんでもない場所よ」

「とんでも……って。そういうのは幾らでも体験してきただろ」

「見れば分かるわよ」


 言いながらオルフェは窓の近くまで歩いていき、手招きする。

 何も嵌っていないその場所から見えたのは……文字通りの絶景。

 無数の断崖絶壁に、豊かな木々に滝や川。そして、そこを行き交う見たこともない巨大な爬虫類の如き生き物たち。

 キコリはそれを、本ですら見たことがない。しかし……何処となくワイバーンと同系統の何かであるようにも見えた。

 ズシンズシンと歩く、2階建ての家よりも大きいモノや、大きさはキコリほどでもかなりの速さで走るモノ。様々なモノがそこかしこを闊歩している。


「なんだ、あれは……」

「ドレイクよ。ワイバーンと同じで、形だけはドラゴンに似てないこともない、みたいな連中」


 そう、ドレイク。ワイバーンの近似種であり、似て非なるものだ。つまり此処はドレイクたちの住処である……のだが。あまりにも数が多すぎる。ところどころでドレイク同士の争いも起こっているが、どう見ても普通の状況ではない。


「そうか。此処にもデモンが混ざっているってことか」

「そういうことでしょうね。いくらでも復活するデモンと数に限りのあるモンスター。いずれ此処もデモンが占拠するようになるのかもしれないわね」

「……」


 確かにそうかもしれないとキコリも思う。今はモンスター側が勝っていても、何処かで数が大きく減れば逆転されるかもしれない。弱肉強食という言葉もあるにはあるが、生物としての理を超越したデモン相手にその論理を貫かせるのは少しばかりどうかという部分もある。

 しかし、キコリはドレイクたちを見ていて……ふと、グレートワイバーンのことを思い出す。


「なあ、オルフェ。アイツ等……もしかして話、出来たりするのか?」

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