創土のドンドリウス
城の扉が、扉を守る衛兵モドキたちによって開かれれば、そこにあったのは奥へと続く廊下だ。
壁には幾つかの扉があり、それぞれを衛兵モドキたちが守っているのが見える。
案内もないので当然ドンドリウスが何処にいるかは分からないが……キコリは躊躇わずに近くの衛兵モドキに声をかける。
「王に謁見したいのですが、何処に行けばよろしいですか?」
「そのまま真っすぐお進みください」
そう答える衛兵モドキに従い歩いていくと、少し広い部屋に出る。
椅子やら机やらが置かれ、本棚らしきものも1つ。
その机に本を置き捲っている、眼鏡をかけた緑髪の男が1人。
長い髪を後ろでくくり、何処か知的な印象がある男だ。
着ている服は白色のカッチリとした服で、知的なだけでなく気難しそうな印象をも与えている。
アレが此処の王……つまりドンドリウスということなのだろうか?
キコリはそう思いながらも本を読んでいるドンドリウスが此方を向くのを待とうとする。
(邪魔されたくはないよな……第一印象は大事だ)
しかし、そんなキコリの気持ちを察してくれないドラゴンが1人。
「おいてめードンドリウスだろ。何シカトこいてんだ、ぶん殴られてえのか」
「ア、アイアース……!」
「下品な奴だ。同じドラゴンとは思えん」
ドンドリウスは読んでいた本を閉じると、キコリたちへ視線を向けてくる。
「知っている姿と随分違うがアイアースだな。触手まみれの似合いの姿はどうした」
「殺し合いがお望みかこの野郎。俺様がどういうドラゴンか忘れたようだなコラ」
「そっちがキコリか。なるほど、人間からドラゴンに至るとはな。しかし納得できる部分はある」
「納得?」
「ああ、君はなるべくしてドラゴンになったのだろう。何が引き金になったかまでは私は知らないが……そう、素質があったということだな」
引き金は……やはり、グレートワイバーンとの戦いだろうとキコリは思い出す。あの時キコリは人間をやめたのだから。
「素質、か。それは喜んでいい話なのか?」
「さて、な。属するべき集団を外れたことが幸福か不幸か。それは私が判ずるべきではないとは思うがね」
この短い時間ではあるが、ドンドリウスはかなり思慮深く、そしてアイアースへの態度から見て性格はあまり良さそうではないともキコリは感じていた。
此方に気付きながら本を読んでいたことはさておき、アイアースの喧嘩を普通に買うのも好戦的な部分があることを示している。表面上の静かな雰囲気に騙されるべきではない。
「えっと……今言われた通り、俺は『死王のキコリ』だ。『創土のドンドリウス』、俺の話を聞いてくれないか?」
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