人間モドキ2

「え、ええ。そうね?」

「こんな日はこうやって散歩したくなるんだ」


 そう言い終わると、オルフェを避けるように何処かへ歩き去っていく。

 それを見てオルフェはなんだか不気味そうな表情をしていたが……まあ当然だろう。さっきの会話中、1度もオルフェと視線が合っていないのだから。


「うーん……敵ではない、みたいだな」


 キコリはその辺りにいる店の店主に「こんにちは」と話しかけてみる。

 どうやら雑貨屋であるらしい店主は視線の合わないままニコリと笑みを浮かべてオーバーアクション気味に手を広げる。


「ようこそ雑貨屋へ! 何か買っていくかい!?」

「あ、いや。この町の」

「そうかい、また来てくれよ!」

「え!? いや、ちょっと」

「ようこそ雑貨屋へ! 何か買っていくかい!?」

「情報が欲しいんだよ」

「そういう名前の商品はうちじゃ扱ってないねえ」

「いや、そうじゃなくてだな」

「そうかい、また来てくれよ!」


 そんな会話を何度か繰り返すと、キコリは疲れ切った顔で仲間の下へと戻っていく。


「おう、おつかれ。なんか春先に見る悪夢みたいで面白かったぜ」

「アレはないわね……ていうか会話を仕込んでるのね」

「ある程度のキーワードがあるようだな」


 ぐったりして座り込んだキコリをそっとしておきながら……アイアースは面白そうにバシバシ叩いているが……オルフェとドドは人間モドキたちについて考察していく。

 まず、人間モドキは会話が出来るように見えるが実際には出来ていない。

 決められたキーワードに反応し決められた言葉を話すことはできるが、それ以上は出来ない。

 そして障害物をよける程度の性能はあるが、それが障害物か生物かは恐らく判定していない。

 何より視線が合わない。歩いている人間モドキはずっと歩き続けている。

 これらの情報を総合すると……1つの結論が出せるようになる。


「あの人間モドキは複雑な命令を仕込んだゴーレムね。でも高性能のものではない……あくまで最低限のものよ」

「あれだけ出来るなら高性能なのではないか?」


 ドドとしては充分凄いものであるように思えるのだが、それは魔法に詳しくない者の感想であってオルフェにとってはそうではない。


「高性能なゴーレムなら、視線を合わせて会話……そう、もっとコミュニケーションを出来るはずよ。でも此処の人間モドキは出来てない。見た目もこだわってるように見えるけど、結構雑でしょ? 出来なかったのか必要性を感じなかったのかは分からないけど」

「……その2つだと、どういう違いが出る」

「簡単よ。出来なかったのならゴーレム技術が未熟なだけ。やらなかったのなら、人形遊び以上の理由を見出してないってことよ」

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