豪華絢爛な都市

 フェアリーケインの放つ光線がデモンサンドワームを貫き、キコリたちを狙おうと出現するデモンサンドワームをも逃さず貫く。

 精密に設計されたフェアリーケインは魔法としては非常に異端な……精密設計された道具のような繊細な魔法だが、それ故に完成すればこれだけ凶悪だ。

 キコリたちは走って逃げ……しかし、その行く手にもデモンサンドワームが現れる。


「グングニル!」


 しかし、そこにオルフェが光の槍を投げデモンサンドワームを爆散させる。相手なんかしていられない。そんな考えが透けて見えるかのようで、キコリたちも当然足を止めずに走る。


「あったぞ! 転移門だ!」

「よぉし、飛び込め!」


 そうしてキコリたちが飛び込んだ先は……赤土の荒野だった。

 ギラギラと照らす太陽を確認する暇なく襲ってくるのは、無数の巨大ハゲワシ型のモンスター……キリングバルチャーだ。

 どうやらそこかしこにある断崖の上から飛来してくるようだが、デモンか普通のモンスターかはよく分からない。


「ギエエエエエエエエエエ!」

「フレイムショット!」

「ギエアアアア!?」


 だが、オルフェの放った無数の炎弾でキリングバルチャーたちはアッサリと焼け焦げて地面に落ちていく。全く容赦のない威力の魔法だったが……オルフェはもう我慢ならないとでもいうかのように叫ぶ。


「あー、もうめんどくさい! どいつもこいつも数を頼みに波状攻撃仕掛けてきて! まとめて来なさいよ、焼き鳥にしてやるわ!」

「ま、まあまあオルフェ。なんか脅えて襲ってこないし」

「あ、ほんとね。デモンじゃなかったのね」


 そう、第2陣と思われるキリングバルチャーたちはオルフェの火に脅えたのか、襲ってくる様子は一切ない。ならばとキコリたちはそのまま赤土の荒野を一日かけて抜けていく。

 いくらキリングバルチャーたちが襲ってこないとはいえ、こんないるだけで体力を消費しそうな場所では休めない。

 だからこそ、多少の無理をして赤土の荒野を抜けて。そうすると……転移門を抜けたその瞬間に、今までとは全く違う光景が現れる。


「な、なんだこれ……」


 キコリがそう言ってしまうようなそれは、今までの人生では見たことがないような豪華絢爛な都市。

 中央に立つ巨大な城をシンボルに巨大な壁で囲まれた町と、美しい草原。

 全ての建物が美しい石で作られており、壁も防衛都市のように堅固な防御力を誇っていそうだ。

 まるで人間の町の……キコリが人生で本の挿絵以外では1度も見た事のない、「王都」と呼ばれる町にも似た巨大な建造物群だった。

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