たとえ無様でも

「じゃあ受けよう」

「お、おう? 即答しやがったなお前」

「そりゃまあ、どうせ会いに行くつもりだったし。協力してくれるか聞くぐらい構わないだろ」


 今のところ初見で攻撃してきたのはアイアースくらいのものだが、ドンドリウスがどれだけ狂暴でも同じドラゴンなら話くらいは聞いてくれるだろうともキコリは思っていた。

 万が一戦闘になったとして、アイアースと2人がかりの今であれば負けることもなさそうだ。

 それを前提にすれば、受けない理由がないのだ。まあ、先程の話を聞く限りでは「手伝った方がいい」という考えになる……というのも当然あるのだが。それよりも根本的なところで、キコリはこの頼みを受けたいと考えていた。


「オルフェ。ドド。2人はどうだ?」

「まあ、キコリがいいなら」

「ドドも同じだ」


 2人に「ありがとう」と言うと、キコリはミレイヌへと向き直る。


「そういうことだ。俺も説得はしてみるけど確約は出来ない。それでもいいか?」

「ああ、構わない。それだけでも私たちには難しいことだ」


 ミレイヌが手を振ると、執事アウルがキコリに何か丸まった紙のようなものを差し出してくる。


「創土のドンドリウスの住処までの地図です」

「ああ、助かるよ。じゃあ、早速行ってくる」


 キコリが身を翻そうとすると、ミレイヌが「どうか、頼む」とその背に声をかける。


「これは、モンスター全ての危機なのだ……」

「ああ、分かってる。半端なことはしない」


 そうして執事アウルに送られ屋敷を出ると、オルフェが「いいの?」と囁く。


「利用されてるって自覚はあるのよね?」

「そりゃあるさ。でも、世の中はそういうもんだ。それしか手が無いなら、なんだって使う。生きる為だ……別に不思議な話じゃない」

「まあな。生きるのにソレが必要ならゴブリンだって丸齧りするぜ、俺様はよ」


 キコリにアイアースが納得したように頷くが、どうもメンタル的にアイアースはキコリと似通ったところがあるようだと、オルフェはそんなことを思う。


「カッコよく死ぬことに意味なんてない。たとえ無様でも生き残ったら勝ちなんだ」


 そう、キコリはそうしてきた。カッコよく勝てたことなんて数える程しかない。

 泥臭く、地味で、決して英雄譚の主役なんかにはなれない勝ち方をしてきたのがキコリだ。

 だからこそ自分たちの使者をアッサリ殺すドラゴンの、その同族に望みを託すような、そんなギャンブルじみた「生き残り方」をキコリが否定できるはずもない。それはキコリ自身のエゴを否定するのと変わりはないからだ。

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