お前が決めていいぜ

「……ドンドリウス?」


 それは、この近辺で会えるのではないかと期待していたドラゴンの名前だ。

 しかし協力を仰ぎたいとはどういうことなのだろうかとキコリは思う。

 わざわざキコリたちに頼もうとしているということは、居場所が分からないか頼めるような相手ではないか、どちらかであるのは間違いない。


「居場所を知ってるって意味でいいのか?」

「ああ、知っている。しかしドンドリウスに向けて送った使者は悉く帰っては来なかった」

「……アイアース。ドンドリウスって」

「分かるだろ? 下等生物と話をしようってドラゴンのほうが珍しいんだよ。ちなみに俺様も消し飛ばすほうだ」

「つまり過激なんだな……」


 なるほど、そうであれば確かに同じドラゴンに頼もうというのも納得がいく話だ。

 しかし、話も聞いてくれない相手に何を頼もうというのかはやはり疑問だった。


「今の話からして、ドンドリウスは話を聞く気がないんだろ? そんな相手に何を頼もうっていうんだ?」

「……創土のドンドリウスは『建築』に造詣の深いドラゴンだという」

「建築?」

「そうだ。人間の町に紛れ建築という概念を知り、以後は独自の建築を続けているという。こうなる前は、この町の隣のエリアはドンドリウスの建築した町があった」

「ちなみに、そこを拠点にしなかった理由は聞いてもいいのか?」

「私たちが見た時にはもう居なかったが……怖いだろう。勝手に占拠したと滅ぼされたら」


 まあ、確かにドンドリウスが過激であるならそういうことは普通にするだろう。

 同時にキコリは、ソイルレギオンが「生きている町」を作っていた理由もなんとなく察することができた。

 つまるところ、ソイルレギオンは何処までも「創土のドンドリウス」というドラゴンの姿を目指していたのだろう……ということだ。まあ、それが分かったところで何かが変わるわけでもないのだが。


「同じドラゴンが交渉すれば話を聞くだろうと期待してるのは分かった。それで頼みたいのは町づくりなのか?」

「そうだ。長い間動いていなかった状況が、ここ最近は短い間に連続している……2度あったならば、3度目も近いうちにあると考えるのは自然だ。そしてそうなる前に備えておきたい」

「で、考えたのがお前らの町を作らせる、か。ククッ、中々にイカれた考えしてやがる」

「猶予がないのだ……! この町も此処まで育てたが、圧倒的に足りていない。何かあった時の備えが今どうしても必要だ!」


 ミレイヌにアイアースはバカにしたようにハッと笑うとキコリへ振り向く。


「どぉすんだ? お前が決めていいぜ」

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