死王
「お、おいアイアース」
「キコリは黙ってろ。いいか、俺様はな? 『さっさと言え』と言ったんだ。俺様たちを呼んだ理由をな。それが何だ? 世界がどうの転生者がどうのと。俺様には『だから人間をぶっ殺してくれ』か『だからゼルベクトをぶっ殺してくれ』のどっちかの話にしか聞こえてねえぞ。それともアレか。遠回しに俺様をイラつかせて自殺の手伝いでもさせてえのか? そういうの一番得意だぞ? あ?」
「アイアース。途中までは同意するから黙っててくれ」
キコリがアイアースの腕を掴むと、アイアースは思い切り睨んで……路地裏のチンピラのような睨み方をしてくるが、すぐに「チッ」と舌打ちして黙る。
「悪いけど俺もアイアースと途中までは同じ意見だ。俺たちを通して竜神に……神々に何かを期待しているわけでもない。なら、ドラゴンに何を期待してるんだ? こう言ったらなんだが、俺もアイアースも、ドラゴンの中ではそんなに頭は良くない方だぞ?」
そのキコリの言葉にアイアースがキコリを凝視し何かを言いたげに口を開け閉じして、やがてもにもにと口を動かし飲み込むような動作をして黙り込む。
「ほんっとアイツ……怖いもんなしね」
「ドドはあの状態のドラゴンの近くにはいたくないぞ……」
オルフェとドドはアイアースがキレかけつつも我慢しているのに気付いていたが、正直真似できない……というより真似したくないやり方ではある。何故アイアースがキレていないか、全く理解できないのもある。可能性だけで論ずるなら「アイアースが我慢していいと思う程度にはキコリを気に入っている」ということだろうが……少なくともキコリは気にしていないように見える。
「人間を滅ぼしてくれという話なら、悪いけど違う奴に持っていった方がいいと思う」
「そういう話ではない。というか、貴方たちのことはドラゴンを名乗り町に入った時から逐一情報は得ていた……『海嘯のアイアース』のことは知っていたがキコリ、貴方は一体?」
言われて、キコリは自分が名前しか名乗っていなかったことに気付く。確かにそれは、ドラゴンとしては正しい名乗りではない。だから、キコリは名乗りをやり直す。
「ああ、ごめん。俺は『死王のキコリ』。これでいいか?」
その名乗りにアイアースが「へえ」と声をあげ、ミレイヌと執事アウルは驚愕に……いや、恐怖すらその瞳に浮かべて目を見開く。
いや、ミレイヌなどはガクガクと震え、椅子に力無く座り込む。
「し、死王……? キコリ。貴方はその名の意味を、理解、なさっているのか……?」
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