ゼルベクトとかいうカス
「……それ以降、力や知識を持った転生者がそれなりの頻度で現れるようになった。『ミレイヌ』の願った通りに世界には大きな変革が訪れ、望んではいなかった歪みも強くなり続けているのだ」
「1つ、疑問がある」
そう、キコリには1つ大きな疑問があった。それは大神エルヴァンテのことだ。
かつて大神エルヴァンテと話をした時……エルヴァンテは転生者のことを「迷い子」と表現した。
侵略者ではなく迷い子だ。そして無条件にではないが、転生者の存在をも許容していた。
だからこそ、疑問が湧いてくる。
「それほどに歪みが酷いのなら、根本的な対処が必要になるはずだ……神々はどうしてそれをしないんだ?」
破壊に到る歪さは、世界に淘汰される。しかし、予想を超える好転をもたらすならば、それは許容されるべきだ。確か大神エルヴァンテはそう言っていた。
だがデモンモンスターまで出現した以上は、もはや許容を超える状態ではないのか?
だというのに、キコリだけでも転生者に数人会っている。
どれも相応に危ない相手だったが……考えてみれば、そんな頻度で「危険な転生者」が現れるのを神々は許容しているとでもいうのだろうか?
「……それは私たちにも分からん。神々の意思など、推し量れるはずもない」
「少なくとも神々の降臨など記録にはありません。まあ、ドラゴンなどというモノを置くくらいです。地上のことになど興味はないのかもしれませんが」
執事アウルも言いながら肩をすくめるが……そんなはずはないとキコリは思う。
少なくとも「不在のシャルシャーン」は神々の意思の下で動いているはずだ。
他のドラゴンは……キコリ含め、そんな気配は微塵もないのだが。
しかし、それでもキコリには言えることがある。
「神々は地上を見守っている。少なくとも大神エルヴァンテは確実に」
「見守っている、か。便利な言葉だ」
しかし、ミレイヌには微塵も響いた様子がない。まあ、当然だろう。神々が介入していればどうにかなったはず。そう思えるポイントは、先程の話の中でも幾つもあった。
だからこそ、ミレイヌは神々を信用していない。ならば……一体どうすればいいのか?
答えはない。あるはずもない。たとえ此処で大神エルヴァンテからの声を賜ろうとも「助けていない」という事実は変わらないのだから。
「そんなものはどうでもいいだろが」
だが、悩むキコリの思考を心の底から面倒そうなアイアースの声が打ち切った。
「結局ダラダラと長ぇ話を聞かせやがって。『ゼルベクトとかいうカスが転生者を送り込んで何かを企んでる』以外の情報は全部泣き言だろうがよ。ふざけやがって」
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