デモンホーンスタンプ

 デモンホーンスタンプ。つまりホーンスタンプのデモン、ということだが……つまるところ、巨大生物の退治である。


「え? これか? デカそうだぞ」

「そのくらいやらねえと印象に残らんだろ」

「……かもな」


 確かにアイアースの言う通り、ちまちまデモンゴブリンやデモンオークを倒していたところで記憶に残るとは思えない。

 一発目で大きな成果を出して目立つ。それがかなり良い手段であることは間違いないように思えた。

 思えた、のだが……フレインの町から幾つかのエリアを移動した先にある平原で、キコリたちは想像以上に巨大なデモンホーンスタンプから逃げていた。

 姿は確かに依頼書のそれにそっくりだ。しかし、サイズは通常のホーンスタンプよりも更に大きい。

 足が巨木のようで、ドドに前衛を務めてもらう作戦を早々に放棄したほどだ。

 あんなものに蹴られてはドドも吹っ飛ぶだろうし、踏まれたらとんでもないことになりそうだ。


「バオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

「気性が荒いなんて依頼書になかったよな!?」

「ねえな!」

「ちょっとどうすんの!? アイツの毛皮、魔法全然効いてる様子ないんだけど!」


 オルフェも叫ぶが、魔法を弾いているわけではない。だが、単純に毛皮の防御力と魔力が巨体に見合うほどに高いのだ。

 だからこそ逃げながら方法を考えていたが……結局のところ、方法は1つしかない。つまり……。


「なら、直接仕留める!」

「おお、いいなそいつぁよ!」


 キコリとアイアースは打ち合わせもせずに左右に分かれ、斧と三叉の槍を手に走り出す。

 

「あ、あいつらああああ! もう、仕方ないわねえ!」

「ぬ、くっ……確かにやるしかない、か!」


 オルフェとドドも反転しデモンホーンスタンプへ向かっていくが、作戦があるわけではない。

 実際、キコリは真正面から木を切るように足へと斧を叩き付け、そのまま斧を吹っ飛ばされる。


「無理か! ならこうだ!」


 キコリはそのまま足の毛皮を掴み、毛を引っ張りながら上へと登っていく。

 斧も魔法も弾くような頑強な毛皮の毛は、キコリが引っ張ったところで抜けはしない。


「さ、流石に真似できん!」

「アレはバカの所業よ! アンタはどいてなさい!」

「了解した!」


 しかしドドの巨体が登れば流石に抜けるだろう。ドドはデモンホーンスタンプの進行方向から外れ、オルフェは顔近くまで飛ぶと火の矢の魔法を次々と放つ。


「このデカブツ! 面倒かけてんじゃないわよ!」


 しかしそれも毛皮を貫けず、デモンホーンスタンプはオルフェに向かって咆哮するが、そんなものは怖くもなんともない。

 

「ハハッ、遅かったな! 俺様の方が早かったぜ!」

「だな。じゃあ早速……やるか」


 そう、オルフェが気を引いている間にデモンホーンスタンプの上まで登り切った2人は、それぞれの武器に得意の技を発動させる。


「ミョルニル」

「トライデント」


 キコリは使い慣れたミョルニルにより斧に電撃を纏わせて。

 アイアースはキコリに聞いた人間の魔法を自分なりに再現させたそれで三叉の槍に渦巻く水を纏わせて。

 2つの狂暴な一撃が、デモンホーンスタンプの身体を貫いた。

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