手っ取り早く名をあげてみようじゃねえか
ざわざわとモンスターたちが集まりざわめく紹介所は、どうやら冒険者ギルドのようなものであるらしかった。
冒険者ギルドと違うのは、どうやら仕事の内容が多岐に渡っていることと……分類がやけに細かいことだろうか?
小屋と掲示板はどうやら仕事の種別で分かれているらしく「採取」「戦闘」「雑用」など様々であった。
「あ、ミノタウロスの牧場の仕事があるな」
牛牧場での雑用。小屋掃除、破損個所の補修など。牛に触りし者は殴る。本気で殴る。泣いても殴る。許されると思うなよ。
「……これは、なんだろうな。牛に触ってほしくないことはよく伝わってくるけどな」
「自分と似た顔のが他の種族に『世話される』のが気に入らないんでしょ」
他にも店先の掃除、道の雑草処理、洗濯……「雑用」の仕事は本当に雑用であるらしく、今のキコリたちに見るものは無さそうだ。
「採取」の仕事に関しては草に木の実、あるいは木そのものだったりと、此方も入手や運搬難度が異なるだけで然程変わらない。外に行く「雑用」といったところだろう。
ならばと「戦闘」の掲示板を見て、そこでキコリたちは黙り込む。中々に物騒な内容が並んでいたから……というのが、その理由の1つだ。
デモンゴブリン討伐。デモンゴースト討伐、デモンオーガ討伐。デモンモンスターの問題はモンスターたちにとっても大問題であると分かるものが並んでいた。
しかし、一番気になったのはそこではない。
デモン。その単語は確か「不在のシャルシャーン」が名付けたものであって、キコリたちもその名称を使ってはいるが、それが此処で出てくるというのはどういうことなのか?
「まさか此処、シャルシャーンが作ったんじゃないだろうな」
「確かにそれだと色々納得いくわね」
キコリとオルフェも思わずそう囁き合うが、実際のところどうであるかは分からない。
此処をシャルシャーンが運営していたとすれば、とっくに何処かのタイミングで出てきそうなものだが、その気配もない。
だからキコリたちに出来るのは予想だけだが、今のところ答え合わせも出来やしない。
そうなれば、可能性として頭の隅に置いておくのが一番正しいのだろうという結論になってしまう。
「まあ、今はどうしようもない。会ってみれば全部分かるんだからな」
「穏便に行くならそうだな」
「当然穏便だ。わざわざ平和を乱したくはないんだ」
「ま、そりゃそうだ……じゃあ、手っ取り早く名をあげてみようじゃねえか」
キコリにアイアースも肩をすくめながら頷き、1枚の紙を剥がす。
そこに書かれていた内容は「デモンホーンスタンプの撃破」。
報酬も大きなその依頼書に描かれていたのは……まるでマンモスのような、そんな生物の姿だった。
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