そういう生き方もあるってことよ
「ふーん」
アイアースから返ってきた反応は、何の気持ちもこもっていない……物凄く軽い返事だった。
凄くどうでもいい。あるいは、そんな気持ちはこもっていたかもしれないが。
そして実際、どうでも良いのだろう。
「聞いといてなんだけど、何も興味ねえわ」
「まあ、お前はそうだろうな……」
「居場所がどうとかくだらねえ返ししやがってよ。どんな生き物も、結局最後は1人だぞ」
まあ、それはそうかもしれない。どんな生き物であろうと、同時に生まれて常に一緒に居て、同時に死ぬということなど出来はしない。
1つの生き物として生まれ落ちた以上は、いつかどこかで1人になる。
それは避けられないことだし、生きるとはそういうことだ。だからこそ、キコリはハハッと笑う。
「まあな、その通りだ」
「よし、くだらねえ話は終わりだ。それより、さっきお前は面白いこと言ったな」
「え? 俺が?」
「おう。この町、ドンドリウスの根暗野郎が作ったごみ溜めかもしれねえって言っただろ」
「いや、そこまでは言ってない」
「そうか?」
「ああ」
「そうか……」
確かに聞いたと思ったんだがなあ、と呟いていたアイアースだが、すぐに気を取り直したらしく「まあ、ドンドリウスの野郎の話だ」と続けてくる。
「此処がドンドリウスが作ったって話は、意外とアリかもしれねえぞ」
「何か根拠でもあるのか?」
「難しい話じゃねえよ。この町の建物には強い魔法がかかってる。それがドンドリウスのものかは分からなねえが、相当に出来る奴だぜ。そんなもんがいるとなると……」
「ドラゴン、か。オルフェ、気付いてたか?」
「え? 当然でしょ。ちなみにかかってる魔法は保護の魔法ね。人間の町でも偉そうな人間が住んでるとこにはかかってたわよ」
ちなみにキコリは全く気付いていなかった。その辺りが魔法の才能がないと言われる理由なのだろうが……ドドは「ドドは気付かなかったな」と安心することを言っていた。
「ただ、保護の魔法ってそんなに珍しい魔法でもないのよね。あたしたちの村にもかかってたし」
「そうなのか?」
「そうよ。保護の魔法を超えるような攻撃を受ければ当然破られるけど。この町にかかってるのはかなり強いのは確かだけど、常識の範囲内だと思うわ」
魔法の得意な連中なら時間かければ出来る範囲ね、とオルフェは言うが……そうであればドラゴンの仕業であるとは言い切れないかもしれない。
もしドラゴンが関わっているのであれば、妖精の常識を超えるような保護の魔法がかけられていてもおかしくはない。
しかし……逆にドラゴンの関与を思わせないつもりであれば「常識的な範囲」でかけているかもしれない。
「……もしドラゴンだとすると、会ってみたいな」
「あー? 会ってどうすんだよ」
「俺の生き方の参考にしたい」
「めんどくせえ野郎だな。生きてて疲れねえか?」
「そういう生き方もあるってことよ」
「わっかんねえなあ……」
解説したオルフェにアイアースは大きく溜息をついて。
「「で、実際どう動く?」」
オルフェとアイアースは、同時にそう声をあげて。キコリとドドは、驚きに思わず目を見開いていた。
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