悩んでも答えの出ない話
これもまた、悩んでも答えの出ない話ではあるのだろう。
結局、その日一日はフレインの町を探索し色々と情報を得てきたのだが……分かったことは然程多くはなかった。
広い、というよりはベッドの大きいドドの部屋に集まり、キコリたちは今日手に入れた情報を整理していく。
まず1つ目。このフレインの町は結構昔からあるということ。そして、転移門の「先」は最近変わったということ。
「これはまあ、予想通りだったな」
「そうなの?」
オルフェの問いにキコリは「ああ」と頷く。思い出すのは、かつてクーンやアリア……その他いろいろな人から聞いた話だ。
「人間の世界じゃ、転移門の先……ダンジョンの奥にはモンスターの王がいるなんて話もあったんだ。なら、こういうのがあったって不思議じゃあないだろ」
「そう、かしら」
「ああ。たぶんだけどこの町に来た冒険者が帰還して広めた話がそういう風になったんじゃないかとも思ってる」
「ああ、確かにそういうのはあるかもしれないわね」
とはいえ、この町は本当に「あるだけ」ではある。統治することで何かを得ているようではないように見えるし、そこから何か先を見据えているようにも思えない。
此処で得た通貨「セーン」だって、他でどの程度通用するものか分からないのだ。
いわゆる運営目的が不明な町。それがこのフレインの町なのだ。
しかしまあ、今のところそれで不都合な何かがあるわけではないので別に構わない。
そして2つ目。このフレインの町の町長の顔を、誰も知らないということ。
衛兵ですら町長の遣いだという執事の顔しか知らず、その執事も仮面をかぶった「人間のような何か」であるという。
「聞いた感じドラゴンの可能性もありそうじゃないか?」
「どうかしら。仮にドラゴンだとしたら、そう伝えたほうが統治はしやすいと思うし……執事を名乗る理由が分かんないでしょ」
それは確かにその通りだ。ドラゴンであるならば、それを伝えればまさに絶対的権力に等しいはずだ。町長がドラゴンだというのなら、それをやらないというのは相応の理由があるのかもしれないし……そうではないなら町長はドラゴンではないということになる。
「そっか。ドラゴンだったら創土のドンドリウスかもしれないなと思ったんだけどな」
以前のソイルレギオンと「生きている町」のこともある。ドンドリウスがこの町を作ったというのであればキコリとしては納得がいく話なのだが……まあ、そんな簡単な話ではないのかもしれない。
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