大通り

 その人間たちの姿は、冒険者のそれに似ていた。

 武器と防具を身に着け、しかしどこか居心地悪そうに路地裏に集まっている。

 いや、居心地がどうこうというよりは警戒している、のだろうか?

 まるで誰にも背中をとられたくないと言っているかのようですらある。


(つまりモンスターへの警戒か。まあ、そうだよな。当然だ)


 自分たちと同じ言葉をモンスターが喋り、自分たちと同じような生活をしている。

 だから信用できると思うのであれば、相当お人よしか警戒心がないかのどちらかだ。

 その裏に何があるのか。それを警戒するのは当然だ。けれど、その上でこの町にいるというのは……それは。


「此処が町の外よりは安全だという認識はあるってこと、か」


 キコリたちが防衛都市ニールゲンを旅立ってから、すでに1度ダンジョンの変化が起こっている。

 既知のルートは未知のルートに変わっているだろうし、町から近い場所にいたはずが遠い場所になっていた……ということだってあるだろう。

 実際キコリたちだって、ニールゲンどころかヴォルカニオンのところに戻れるかどうかも分からない。まあ、今のところ戻るつもりもないのだが。


「あんなのどうでもいいでしょうに。ほら、行くわよ」

「分かったよ」


 オルフェにツンツンと突かれながらキコリは歩く。まあ実際、キコリは彼等と関わるつもりもない。

 彼等の助けも必要としていなければ欲しい情報もない。ついに言えば、彼等が本当に欲しいだろう情報……つまるところ人間の町に帰るための手段もキコリは有してはいない。

 もしかするとそれは「薄情」と呼ばれるような類のものなのかもしれないが、キコリにとって「見知らぬ他人」以上の感情をどうしても抱けそうにはない。

 だからこそキコリは彼等をそのままに大通りへと向かう。そして想像通りに彼等はついてくることもなく、キコリたちは大通りへと出る。

 すると……そこは、想像と反して随分と静かな場所だった。

 恐らくは町の中央と思われる場所には町長のものであろう大きな屋敷があるが、大通りには店らしきものは宿屋くらいしかない。他はどうやら、全て普通の家であるようだった。


「宿屋は……幾つかあるな」

「テキトーでいいだろ、テキトーで」

「何言ってるのよ、ある程度は選ぶ必要があるでしょ」


 アイアースとオルフェが言い合っている中、宿屋を吟味していたドドが1つの宿屋を指差す。


「……あの宿屋。やけにスケルトンが入っているな」

「ん? ああ……って、アンデッド用宿屋『二度目の埋葬』……?」

「名前の趣味悪っ」

「ハイスケルトンが運営してるのかもな……」


 どのみち、あそこには泊まるまいと。キコリたちは早々に『二度目の埋葬』から視線を逸らす。

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