フレインの町
そうして歩いていると、このフレインの町には様々なモンスターがいることが分かる。
ゴブリンにコボルト、オークにオーガ、スケルトンにゴースト。巨大な白いサルのモンスター……ホワイトアームや、その色違いの姿もある。
戦ったことはないがハーピーも低空飛行していて、他にも知らないモンスターの姿もある。
そしてそのどれもが共通語を話しているのだ。
(おいおい……共通語は人間の言葉だろ? ドドもオルフェも人間の言葉を覚えたはず。てことは、それを知識としてモンスター間で広げている? てことは……何処かに凄い頭良い奴がいるな)
それがこの町の町長、あるいはもっと上なのかもしれない。それが何者かはキコリには分からないが、少なくともモンスターをここまで文化的に統率できる存在であることは確かだろう。それこそ、ドラゴンの可能性だってある。
「凄いな、この町」
「お、あそこで肉焼いたの売ってるぜ。何の肉だろうな」
「……アイアース。せめて会話をしよう」
「町がどうとかどうでもいいだろうがよ」
まあ、アイアースはそうだろうな……とキコリは全てを諦めるが、周囲を注意深く確認していたオルフェが「キコリの言う通りだと思うわよ」と返してくる。
「これだけの種類のモンスターをしつけるのは大した手間よ。上に居る奴がよっぽど強くなくちゃ、こうはいかないはずだもの」
オルフェが視線を向けた先には、荷運びをしているゴブリンの姿がある。
モンスターの間ではゴブリンほどのクズは中々いないと評判だが、その姿はそれなりに真面目だ。
ゴブリンが悪だくみを混ぜずに労働をするというのは明確な上位個体が居なければ有り得ず、それは別の場所で窓を磨いているコボルトにも同じことが言えた。
基本的に自由人であり、責務だとかルーチンワークだとか。そういうものを死ぬ程嫌がるのだから、真面目に働いているだけでも信じられない快挙である。そこに言葉も覚えさせているとくれば、ゴブリンキングがいたって可能かどうかというほどだ。
「……そんなになのか」
「そんなによ。あたしたち妖精はゴブリン嫌いだもの」
「オークもだ。ゴブリンはオークの武器も盗むからな……1度成功するとまた来るから、何処までも追いかけて殺さねばならん」
「あー……」
それらしき光景は見たな、とキコリは思う。まあ此処ではそれを上手くやっているということなのだろう。しかし、今はそれよりも気になることもあった。
「……気付いてるか?」
「ああ。ドドたちを……というよりも、キコリとアイアースを見ているな」
「こっちを探ってる連中だろ? 敵意じゃねえからほっといてるがよ」
「すごい人間臭いわね。なんで人間が此処にいるのかしら。迷子?」
「あー……人間嫌いは別に変ってないんだよなオルフェ」
そう、路地裏からキコリたちを見ている幾つかの視線。
それは明らかに人間のもので、しかし今は此方に干渉してくる気はないようだった。
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