趣味の品扱いなんだな
とはいえ、友好的に見えるのは確かだ。となれば話を進めるしかない。
「俺たち、この町には来たばかりで勝手も分からなければ金もない。だから手持ちの物を金に換えられたらと思ったんだ」
「なるほどなるほど、頭の良い行動だ。ゴブリンどもとは一味違うな」
アイツ等は交換という概念を叩き込むところから始まるからなあ、とヌーボは笑うがキコリとしては愛想笑いをするしかない。比べられても全く嬉しくないのにどう反応すればいいのやらといった感じである。
「うん、それで? 何を持ち込もうというのかな」
「コレなんだ」
言いながらキコリが手持ちのイエン銅貨や銀貨、金貨を出せばヌーボは「ほう」と感心したような声をあげる。
「触れても構わんかね?」
「ああ」
「どれどれ……うんうん、人間どもの金だな。見たことがある」
しばらくそうやって見ていると、ヌーボは金銀銅でより分けて数えていく。
たぶん頭の中で計算しているのだろうが……やがてパチンと指を……どういう仕組みでなっているのかは分からないが鳴らす。
「君は運が良い。こういうのを欲しがる奴は一定数いるんだが、急ぎで欲しがってる奴に当てがあってね。高く買い取らせてもらおう。うむ、きっかり20万セーンでどうかな」
「セーンの基準が分からない。それだけあればどのくらい出来る?」
「まあ、贅沢しなきゃこの町で半月は楽に暮らせるだろうよ」
「よし、売った」
「ハハ、成立だ!」
金の詰まった重たい袋をキコリは受け取り、ふと気になってヌーボにそれを聞く。
「ちなみにそういうの欲しがるのって誰なんだ?」
「ん? まあ色々だな。人間文化に興味があったり、人間をからかうのに使う奴だったり」
「趣味の品扱いなんだな」
なんか納得しながらキコリは身を翻すが、その背にヌーボの声がかかる。
「あー、一応忠告しとこう。そのナリだと人間に色々言われるかもしれんが、気にするなよ。コボルトの屁の音のほうがまだ聞く価値がある」
「……いるのか? 人間」
「おうともさ。口だけ達者なロクデナシばっかりだ。全部がそうとは言わんがね」
人間の実物を知った上でキコリを「人間ではない」と断言するなら相当今の自分は「違う」のだろうな、と……キコリはそんなことを考えながら「分かった」とヌーボへ返しオルフェたちのところへ戻っていく。
「ひとまず金は手に入った。まずは宿を探して、ゆっくり寝よう。ちょっと野宿が長すぎた」
此処が町なら当然宿もあるだろう。何処にあるかは分からないが……。
「宿なら大通りに出ればたくさんあるぞー」
大通りにあるらしい。ヌーボの助言を受けて、キコリたちは大通りを探し歩いていく。
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