スケルトンギャグ
「セーン……此処の通貨だよな。俺たち持ってないぞ」
「あー、あっちはイエンだっけ?」
「ああ。ドドは持ってないのか?」
「ない。物々交換だった」
キコリたちはそう言い合って「セーン」なる通過を持っていないことを再確認する。
そもそも何処が発行しているのか。ドドもオルフェも知らないのだからモンスター社会で広く流通しているものではなさそうだが、此処ではそれがモノを言いそうだ。
「おい、俺様には聞かねえのか」
「え? 持ってるのか?」
「これだろ?」
自慢げにアイアースが出してきた金貨を見て、キコリは「イエンだな」と呟く。
「あ?」
「1万イエン金貨だ、これ。よく見覚えがあるよ」
「マジか」
へー、と感心したように頷くアイアースにキコリは「ああ」と答える。
知らずに持っていたようだが、どういう経緯で手に入れたかは聞かないほうがいいんだろうな……などとキコリは思う。
聞いてみて万が一「人間ぶっ殺して手に入れた」とか言われたら、どんな顔をしていいか分からない。
「でもさ、キコリ。意外にコレも使えるんじゃない?」
「あー、金だからか?」
「そういうこと。何を使ってるかは知らないけど、金属の価値はそう変わらないんじゃない?」
なるほど、確かにそれはその通りかもしれない。人間社会の貨幣の価値そのものは認められずとも、貨幣に使われる金属そのものには価値がある。ならば、それの買い取りも当然やっている可能性はある。
「よし、やってみるか。あ、これは返すよ」
キコリはアイアースに1万イエン金貨を渡すと、近くの店に近寄っていく。
何やら色々な物を並べている雑貨店の店主らしきスケルトンへとキコリは声をかける。
スケルトンにしては小奇麗な服を着ているが、言葉は果たして通じるのか。
ゴクリと唾を飲みながら「こんにちは」と声をかければ、スケルトンは「おやおや」と流ちょうな声をあげる。
「これはこれは妙なお客さんが来たものだ。人間にソックリだが人間じゃない。何の種族だい?」
「一応ドラゴンなんだが」
「クカカカッ! なら私はドラゴンスケルトンかな! ま、ただのハイスケルトンなんだがね!」
スケルトンの上位種。喋れるのはそれが原因か……などとキコリが考えていると、スケルトン……いや、ハイスケルトンの店主は虚ろな眼窩の奥の光を強める。
「まあいいや。私はこの『副葬品直売所』の店主のヌーボだ。今日はどのようなご用件かな?」
「……墓荒らしなのか?」
「カカカ、まさか! スケルトンギャグってやつさ!」
本当かどうかキコリには判断が出来ないが、妙な奴だということだけは確かなようだった。
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