こういうのが起こる時は
「まあ……確かにそう、だな」
「だろ?」
「つまり、協力してくれるのか?」
アイアースには遠回しな言い方よりも直接言った方がいい。そう考えたキコリが聞けば、アイアースは分かりやすく面倒くさそうな表情になる。
「俺様が? いや、まあ……いいか。おう、手伝ってやってもいいぞ?」
「ありがとう。で、どうすれば2人は見つかる? 可能な限り早く見つけたい」
「んなこた知るかボケェ。お前、俺様にそんな便利な能力があるとでも思ってんのか」
それともお前にそういう能力でもあんのか、とキレるアイアースに「いや、ないけど……」とキコリは応えながら「まあ、しらみつぶしってことか……」と考える。
此処に居たのがシャルシャーンであればよく分からない解決法が出てきた気もするが、居ないものは仕方がない。
「じゃあ、とにかく動こう。此処に居ても……」
言いかけて、キコリは背後の転移門を振り返る。考えてみれば転移門はそれ自体は巨大なものであるはずだ。オルフェたちがどの場所に転移したとして背後には通ってきたばかりの転移門があるはず。なのに、オルフェたちは元の場所に戻ってきてはいなかった。オルフェであれば「そういう状況」になれば一端戻っているはずなのに……だ。
「……! まさか」
キコリは自分が潜ってきた場所とは少し離れた場所の転移門に触れるが……何も起こらない。
まるでそれは壁であるかのようにキコリの手を弾くが、それだけだ。
確かに景色の歪んだ「空間の歪み」がそこにあるのに、潜ることが出来ないのだ。
「戻れない。定められた場所しか通行できないってことか?」
「そういうことなんだろうなあ。ヘッ、よくねえな。こういうのが起こる時は大抵よくねえのが絡んでるって決まってんだ」
「よくないもの、か」
それが何であるかはキコリには想像もつかないが、どうしてオルフェたちが元の場所に戻っていないのかは、これで分かった。
となれば、オルフェたちのことだ。その場で留まっているということもないだろう、キコリたちを探すために動き始めているはずだ。
「まずは1階から探索しよう。片っ端から探せば見つかるはずだ」
「おー、そうだな。ま、ここでこんだけダラダラしてても何も襲ってこねえんだ。ロクなものがいねえのかもしれねえな」
確かに、此処には何もない。まるでホールか何かのような場所だが、家具らしきものがあるわけでもない。あるのは精々、壁にかけられた剣や盾くらいのものだが……それが動いて襲ってくる気配もない。ただの飾りだろう。
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