岩山ヤドカリ
「あー……確かにそうだな」
オルフェの言葉に、場の空気が一気に変わる。
何やら剣呑な雰囲気を出し始めていたアイアースをそのままにするよりも、強制的に空気を変えてしまえばいい。
そんなわざと空気を読まないオルフェにキコリはあっさりと頷く。
キコリからしてみればオルフェの言うことはもっともであり、むしろ気が利かなかったな……と反省する事案ですらあった。
アイアースの言っていることは何やら哲学的でキコリにはよく分からなかったが、キコリとて死にたいわけではない。其処に関しては強く反論したい……が、別に今することでもない。
「とにかく真っすぐ行こう。それで正解かは分からないけど、此処からは出られるはずだ」
「そうね」
何処に繋がっているかは分からない。運が悪ければループするかもしれないが、そうではないかもしれない。
以前アイアースとシャルシャーンがやりあったような海の上に出ることだってあるかもしれない。
1つ転移門を潜るごとに賭けをしているような状況だが、それが足を止める理由になりはしない。
その理由は……すぐ近くに見えてきた高い岩山が地響きのような音を鳴らし振動しているのも関係しているだろうか。
「あー……」
「やっぱりそうなのか」
「なんという場所だ」
「おー、デケえな」
岩ヤドカリ……いや、もはや岩山ヤドカリとしか言いようのない大きさのソレは、同じ岩ヤドカリですら真っ二つにしそうなハサミを持っていた。
その瞳はキコリたちを見据えているが……今のところ襲ってくる気配はない。
しかし襲ってこないと決まったわけでもない。
そして襲ってきた場合……また「魔法を跳ね返す」能力を保持していたら、相当以上に面倒な話になる。
流石にキコリも雲に届かんという高さの岩山を手作業で掘り返してどうにか出来るとは思っていない。これは力がどうというよりは、単純に質量の話だ。
極端な話、あれがハサミを振り回すだけでキコリたちは地面ごと吹っ飛ばされるのだ。
「……襲っては、こないな」
「だが見ている」
「刺激せずに離れるわよ」
アレが魔法を弾き返す能力を持っていないなら、オルフェが全力で魔法を撃てば倒し切れるだろう。しかし、わざわざリスクを負って試してみるつもりはない。
少しずつ遠ざかるように歩いて……しかし、その場所にあった巨大な岩が動き、岩ヤドカリが姿を現す。
そして岩ヤドカリは、問答無用とばかりにキコリにハサミを振るい、当然のようにキコリはハサミを斧で弾き返す。だが……それが合図にでもなったのだろうか。
「ちょっと! アイツ、動き出したわよ!」
岩山ヤドカリが動き出し……キコリたちへと、そのハサミを向けたのだ。
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