「デカい」は強い
そして、これは単純な……非常に単純な話なのだが「デカい」は強い。
人間サイズのモノが個人としてどれだけ強力であろうとも、質量があまりにも違う相手を敵に回した場合、その質量自体が致命的な威力を誇る武器となり得るのだ。
しかし、しかしだ。その程度のことであればキコリは何度も乗り越えてきた。
勝つために命を賭けられるキコリであれば、然程問題ではない。
問題は、これがそのタイミングかどうか……だ。
「……!」
キコリは素早く周囲を見回し、軽く冷や汗を流す。
此処に岩や岩山は無数にある。まさかその全てが岩ヤドカリというわけではないだろうが、幾つかがそうである可能性は充分すぎる程にある。
だから「そう」であれば此処でキコリが倒れることは全滅に繋がる。
正直、アイアースに全てを託せるほどキコリはアイアースを信じられてはいない。
「俺が時間を稼ぐ。ドド、オルフェ、頼む」
「ああ」
「任せなさい」
全く緊張感のない表情……まあ、仕方のないことなのだろうが、そんなアイアースをそのままにキコリは走り、オルフェは魔法の構築を、そしてドドはそんなオルフェを守るべく盾を構える。
そしてキコリはチャージで体内に魔力を溜め込むと、再び起き上がろうとしている岩ヤドカリの殻たる岩に触れる。
「ブレイク!」
バヅンッと。激しく何かが衝突しあうような音がして、キコリは吹っ飛ばされるように転がる。
破壊魔法ブレイクが弾かれた? 違う。今のは、何か別の反応だ。しかし、一体何が。
「……なんだ、アレは」
岩ヤドカリの背負う岩が、薄い輝きを纏っている。岩ヤドカリを守るように展開されているソレは、間違いなく何らかの魔法だ。
アレが原因でブレイクが正常に効果を発揮しなかったのは間違いない。ならば、アレは。
「ほー、結界魔法か。面白ぇもん使ってやがんな、あの下等生物」
「アイアース……」
「ボーッとしてんじゃねえ。くるぞ」
「!」
岩ヤドカリを覆う輝きが強くなり、一条の光がキコリに向かって放たれる。
ギリギリのところで回避したそれは地面を砕き、同時に役目を終えたかのように岩ヤドカリのバリアも消える。
「魔法の分解吸収と反射。たぶんそういう鉱石か何かがアレに入ってやがるな」
「分かるのか?」
「ハハッ! でなきゃ、あんな高度な魔法……使えるわきゃ、ねーだろ!」
アイアースの投げた三叉の槍が岩ヤドカリに突き刺さり、破片が落ちていく。
物理攻撃は効く。ならば、作戦は変更だ。
「オルフェ、作戦変更!」
「分かった! 行ってきなさい!」
「おー、精々頑張れや」
斧を構えたキコリが突っ込んでいくのを、アイアースは適当に手を振って見送っていた。
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