確かに似ている
「妙なのって……一応加護らしいけど」
「役に立ってんのか?」
「いや……まあ……」
「だろ?」
ユグトレイルの森を抜ける時にトレントに襲われないようにはなったが、それ以外で役に立ったかと言われれば「一切ない」が答えになってしまう。
とはいえキコリはユグトレイルの好意を悪しざまには言い難く言葉を濁す。
「しかしまあ、なんだな。真似してみても『人間っぽい』かもしれねえが、お前っぽいかどうかは分からねえな」
「そんなこと言われてもな」
「まあ、いい。始めたばかりだ。その内見えるもんもあるだろ」
一方的に会話を終わらせるアイアースだが……正直キコリからしてみれば、アイアースに自分から学ぶものなどがあるとは思えない。とはいえ、それを言ったところで聞きはしないだろうから諦めている。
その後も何度かの戦闘を重ね、アイアースはどんどん三叉の槍の使い方が上達していくのがキコリから見てもよく分かる。驚くべき習熟速度だが……キコリは少しばかり微妙な気持ちにもなってしまう。
「なあ、キコリ」
「ん?」
「お前ひょっとして、武器扱うの下手か?」
「うっ」
「結構使いこんでいそうな割にゃ、ド素人みてえだ。まあ、斧に技とかはねえのかもしれねえけどよ」
魔法に才能がないのは知っていたが、武器の扱いにも才能がない。そんな事実を突きつけられたようではあるが、キコリとしては今更な話でもある。元より、自分の斧の扱いが達人だと思ったことはない。だからこそバーサーカーのような道が合っていたともいえる。
「まあ、そうだな。俺は色んなものに才能がないんだ。正直、ドラゴンやってくだけの才能もないよ。だからいつも死にかけてる」
「ふーん」
アイアースは全く興味のなさそうな……実際興味がないのだろうが、そんな返事を返す。
自分で始めた話のくせに、そこから先の展開には一切興味がない。つまりはそういうことのようだ。
「ま、別にいいんじゃねえの。戦えてんだし」
「そうか?」
「おう」
再び出現したデモントロールを刺し殺しながら、アイアースは当然のように「それ」を言う。
「才能がある奴しか戦っちゃいけねえって法があるわけでもなし。カッコよく生きなきゃ罪ってわけでもねえ……無様に生きて何が悪い」
「……だな」
キコリとて、生きる為に死に飛び込んでいる。それはきっと人から見れば無様に過ぎるのだろう。
けれど、キコリ自身がその道を選んだのだ。
「自分で選んだ道。そういうことだよな」
「道なんか知らん」
突き放したように言うアイアースに、キコリはクスリと微笑む。
なるほど、確かに似ていると。そう思えた瞬間だった。
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