やっぱ同じじゃないの
「そんな事言われてもな。いきなり襲ってくるの2度目だし」
(あー……キコリもなあ……ドラゴンになってから段々思ったことを思ったまま言うように……)
オルフェが「こいつも仕方ないなあ……でも他よりはマシかあ……」という顔をしているのには気付かず、キコリは即座にアイアースに詰め寄る。
「俺からしてみれば、ケンカ売ってきたのはそっちなんだ。説明しろ、アイアース」
「何がケンカだ。こんな制限バリバリの手合わせがケンカか? ドラゴンなめてんのか新入り」
「世の中では相手の同意なく襲うのはケンカか殺し合いっていうんだ。前回ドラゴンブレス吐いてきたの忘れたのか」
「ありゃあシャルシャーンにやったんだ。お前は関係ねえだろうが」
互いにガンをつけあう2人にドドはオルフェに視線で「どうすればいい」と問いかけてきて。
「はぁー……」
オルフェは仕方なさそうに大きく溜息をつくと、2人の近くへと飛んでいき声を張り上げる。
「このクソドラゴン共! いい加減になさいよ!」
「なんだあ? この羽虫……いや、妖精女王か」
「オルフェ。そうは言うけどな」
「キコリは黙ってなさい」
一言でキコリを黙らせると、オルフェはアイアースへと向き直る。
「今アンタが言った通り、あたしは妖精女王のオルフェよ。で? いきなり手合わせとやらを仕掛けてきた理由は説明して貰えるのよね?」
「理由も何も。手合わせが一番分かりやすい」
「何が分かるってのよ」
「正気度だ」
「はあ?」
何を言っているか分からない。そんな顔をするオルフェだが、アイアースはバカを見るような目を向けてきてオルフェは思わずムカッとする。
妖精女王になったせいか、アイアースが自分の力を抑えているせいか……全く怖くない。そしてそれが、逆に恐ろしい。ここまで装えているという事実が、アイアースの技能の高さを証明しているからだ。
「いいか。普通ドラゴンってのは手合わせしようぜと襲い掛かれば、こっちがそういう風に制限かけてることに気付いてても『よく分からんがナメてるから殺しとこう』となる生き物なんだよ。俺様が知ってる限り、唯一シャルシャーンが気分次第でのってくる程度だ」
「短気なだけじゃない」
「思考を放棄すんのは正気かどうかの問題だろ」
話しながらオルフェは思う。今までのイメージよりもアイアースはマトモに「見える」と。
他のドラゴンも会話自体は出来ているし、エゴこそ強いが色々なものが成り立ちそうにも見える。
問題は、自分以外は性格破綻者だと思ってるところとか、そもそも会話が成り立つまでのハードルが死ぬ程……比喩ではなく実際死ぬし会話に至らないが……それはともかく。
「じゃあ一応聞くけど、ドラゴン以外と対話した経験は?」
「今お前と話してるだろが」
「他によ」
「する必要あんのか?」
やっぱ同じじゃないの、とはオルフェは言わなかった。
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