直接見るとおかしな関係だな
そう、思っても言わないのが正しいコミュニケーションというものだが。
ヴォルカニオンにせよ目の前のコレにせよ、ドラゴンというものは思ったことをそのまま言う生き物なのだろうかとオルフェは達観して。
「うん、そう。で、用件はそれだけ?」
理解を放棄して、そのまま話を進めることにする。
「あー……それなんだがなあ」
アイアースは肩に三叉の槍を担ぎ、自分自身を指差してみせる。
「俺様がほんの少しだけだが同行してやる。有難く思え」
「えぇ……なんで?」
「意味が分からない。どうしてそういう話に?」
耐えきれずにオルフェもそう問いかけ、キコリも本気で意味が分からずそう問いかける。
しかし、アイアースは意味が分からないとでも言いたげに首を傾げてみせる。
「どうしてもこうしてもねえよ。決定事項だ」
「そうじゃなくて、理由くらいあるんだろ?」
天を仰いで「ドラゴン……」と呟いているオルフェをさりげに後ろに隠しながらキコリがそう聞けば、アイアースは「たいした話じゃねえよ」と欠伸をし始める。
「勘だ。お前の真似をすると、俺様の生存確率が上がりそうな気がする」
「そう、か? 俺は毎回死にかけてるけど」
「だが生き残ってる。そうだろ?」
「……それは、俺の力じゃ」
「関係ねえんだよ。お前は生き残り続けている。弱ぇのにだ。そう、俺様と方向性は違うが似てる……なら、それは俺様にも得られるモノだ」
「仲間はやらないぞ」
「要らねえ。俺様は同行する。そしてお前を真似てみる。それが全てだ」
分かったな、と念押ししてくるアイアースにキコリは軽く頭を掻く。なるほど、これは絶対に自分の意見を曲げないだろう。しかしまあ……キコリたちに害のある話でもない。此処は受け入れるしかなさそうだ。
「分かった、行こう。でも……それならドラゴンや妖精女王以外とも会話してくれよ。俺はそういう風に生きてるんだ」
「……まあ、いいだろ」
嫌そうに舌打ちすると、アイアースはドドに近寄りガンをつける。
「よう、よろしくな下等生物」
「俺の仲間だぞ、アイアース」
「あー……よろしくな、キコリの仲間」
「ドドだ。よろしく、頼む」
アイアースがどれだけ力を抑えていようと、ドラゴンであることに変わりはない。
ドドは明らかに気圧されていたが……アイアースはつまらなそうに視線をキコリへ戻す。
「直接見るとおかしな関係だな。理解がムズそうだぜ」
「そうか」
だが、理解しようという気はある。それがキコリの中にある「海嘯のアイアース」のイメージとは合わないのだが……そういうものなのかもしれないと、キコリは自分の中のイメージを修正していた。
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