トロールの集落
「あー……なんだ。オルフェも問題なさそうだし、これで何も問題ないな」
「キコリ。思考が死んでいるぞ」
「大丈夫だ。比較的問題ない」
「それは問題がある者しか言わないと思うが……」
ドドがどうしたものかと考えている横で、オルフェがキコリの頭をぺしっと叩く。
「シャキッとなさいよ。とにかく次はドンドリウスでしょ? さっさと会いに行くわよ」
「まあ、そうだな」
ドラゴンに会い巡る旅。もう自分がどの道に進むかはキコリには見えているが……それでも、他のドラゴンに会い「どう生きるか」を決めなければならない。
そうして初めて、キコリは明確な未来を見据えられる気がしていたのだ。
「とはいえ、ドンドリウスも問題しかなさそうな口振りだったが……マトモなドラゴンはヴォルカニオンしか居ないのか?」
「アンタのそのヴォルカニオンへの無条件の信頼は何なの……?」
オルフェからしてみれば「爆炎のヴォルカニオン」も充分ヤバいドラゴンなのだが、どうもキコリの中ではヴォルカニオンは信頼できるドラゴンに分類されているらしい。
まあ、「海嘯のアイアース」「守護のユグトレイル」「不在のシャルシャーン」……どのドラゴンも相応にヤバい……と、そこまで考えてオルフェは「ん?」と声をあげる。
「キコリ。ユグトレイルは?」
「冷静に考えたら結構ヤバいっていうか、今の状態で会いに行くと一戦交えることになりそうな気がする」
「あー……」
先代の妖精女王が何を考えてユグトレイルの庇護下から離れたのかは分からないが、妖精の性格を思うに想像できる部分はある。
(相当ウザかったんだろうなあ……)
(相当ウザかったんでしょうねえ)
言葉に出さずともキコリとオルフェは同じことを思う。遠征に行ったとユグトレイルは言っていたが、フェイムのあれこれを思い出すにそんな目的があったようにも思えない。
他のドラゴンからのユグトレイルへの評価も考えるに、今のオルフェと一緒に会いに行けば囲い込まれそうですらある。
「加護まで貰っておいてなんだけど、ユグトレイルのことは忘れよう」
「そうね。あたしもそれがいいと思うわ」
「ドドは会ったことがないから何も言えんが……良いのではないだろうか」
頷きあいながら、キコリたちは「次の場所」を目指して歩き始める。
恐らく、此処にはトロールの集落があるはずだが……これだけ大騒ぎしていても、トロールの1人も様子を見に来る様子がない。
ということはもう戦う気がないのだろうが……それならそれでいい。
そう考えていたキコリたちの行く先にあったのは、破壊の跡も生々しい集落と……真新しく濃い、血の匂いだった。
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