たぶんアレは、本来あたしが
ギエンの身体はそのまま、急速にザラザラと崩れていく。
「お会いできて光栄でございました。願わくば、再びお会いする機会のないことを」
「あ、ちょ……」
オルフェが何かを言うより前に、ギエンの身体は崩れ消え去っていく。
そこには何も残らず……静寂の戻ったその場所で、オルフェは大きく溜息をつく。
「言いたい事だけ言って消えて……まったく。それで、キコリ?」
「ごふっ」
此処に来て無茶の反動を抑えきれなくなったキコリが倒れたことで、オルフェが「アー!」と叫ぶ。
「もう、また我慢してたわねコイツ!? 限界まで我慢するのやめろって言ったでしょうに!」
「オルフェ、キコリが死にそうだ。流石に見捨てるのは……温泉の水も効かん」
「分かってるわよ! あたしの意地にかけて絶対死なせないっての!」
キコリに温泉の水をかけているドドをどかすと、オルフェはヒールを発動させていく。
それで分かる。内部がまたボロボロだ……「適応」したばかりだというのに、その限界を超える無茶をしたのだろう。
オルフェが狙われてキコリがやられる危険性を考えてということで決着がついたと判断できるまで水の中から出ないと取り決めていたが……こうなると、それで正しかったのかどうか。
キコリにだけ無茶をさせて、それで相棒と言えるのかどうか。
それも、自分のことでだ。
「……絶対死なせないわよ。たぶんアレは、本来あたしが殺すべきだったのよ」
それを、キコリにやらせてしまった。そうするしかなかっただろうが、結果としてキコリはまた死にかけている。
相棒などといっても、オルフェに出来るのはキコリの命を救うことくらいしか出来てはいない。
だからこそ、思うのだ。「妖精女王」の力が、キコリの隣に立てる一助になるのであれば。
……いやまあ、サレナに殺されたことを思えばそう強いものではないのかもしれないが。
それでも、今より強くなれるのであれば。それはきっと、手に入れる価値がある。
あるが、その継承を妨げる存在がいるとなると。それはまた、キコリを死に近づける結果になるのではないだろうかとも思う。
「……オルフェ」
「まだ動くんじゃないわよ。完全に治り切ってないわよ」
「ああ、いつも感謝してる」
「何を今更……」
そこまで言って、オルフェはゾッとする。そのキコリの声は……背後から聞こえている。
キコリは今、目の前で気絶してオルフェが癒している最中だというのに。
けれど、聞こえる声は確かに。なら、それは。
「……!?」
キコリを守るように飛びのかずに振り返れば、そこには「キコリ」がいた。、
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