魔法で性格が見える

 結局のところ、サレナを追うことに決まって……歩くキコリの頭の上に乗りながら、オルフェは説明を続ける。


「そもそも『未来』って何かって話なのよ」

「何かって……未来は未来だろ?」

「そうね。明日だろうと数秒後だろうと未来は未来ね」


 言いながらオルフェがキコリの頭をべしっと叩くと、キコリは歩みを止める。


「え? なんだよオルフェ」

「今キコリは止まったでしょ?」

「まあ、そうだな」

「でも止まらなかった可能性もあるし、何かの合図かもしれないと周囲を見回した可能性もあるわね」

「……それが何だってんだよ」

「未来なんてものはその程度に軽々しく変わるものってことよ。そんなのが見えたとして、それはその瞬間にはもう、全部違ってるかもしれないでしょ」


 だからこそ、今回の件がオルフェには腑に落ちなかった。

 未来の見える魔法など、あるはずはない。しかし妖精女王殺害の件、そして今回の件。

 どちらも、まるで確定しないはずの未来を見ているかのようであった。そんなことは可能なのだろうか?


「未来が見えるのが有り得ないっていうんなら、高度な予想なんじゃないか?」

「ん?」


 キコリの思い付きのような言葉に、オルフェは何かを感じて聞き返す。


「予想……?」

「だから、予想はたてられるだろ。俺の頭を叩けば止まるかも、とか」

「まあね」


 その「予想」の中で確率の高いものを未来と呼ぶのであれば、未来を見ることは可能なのではないかと、キコリはそう考えたのだ。そして……「それ」であればあるいは未来「予測」の魔法として成立し得るとオルフェも思う。まあ、必要なものが多すぎるが故にどう実現させていいかなど分からないが……。


「それなら確かに未来予測は可能ね。でも、とんでもない大魔法よ。それでいて何1つ確実な結果は得られない博打みたいなものね」

「でも、アイツはそれで俺たちを追い詰めてみせた」

「……そうね」


 その事実は変えられない。ドドがいなければ、キコリたちは全滅していた可能性があるのだ。

 そして同時に、やはりそれは「予測」なのだろうとオルフェは確信する。

 キコリたちが死んだかどうかも分からず、ドドの悪魔の鎧についても読み間違えた。

 ……となると、魔法の正体についても見えてくる。


(たぶん、予測した未来を現実の光景のように見られる魔法、ね。使いこなしているようだけど、たぶん魔法の原理は理解してない。直感だけで魔法を組み上げたのかしらね)


 人間の魔法は比較的そういうものが多い。キコリの「ブレイク」もそちらに近いものだ。

 魔法の効果の幅が大きく、雑で、拾った石を武器だと言い張るような適当さ加減。

 けれど、確かな殺意が透けて見える。キコリの中にある荒々しい性格が、「ブレイク」には見え隠れする。


(魔法で性格が見える。面白いわね……今までそんなの、考えたこともなかったかもしれない)

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