2人目

「それがどうしたってのよ……! 自分の持てる力で幸せを目指して何が悪いのよ!」

「ただひたすらに相容れん。貴様も進化したのだろうが、相当に歪だ。何をしたか聞きたくもない」

「ハッ……! 望む進化をしただけよ!」


 言いながらサレナは空中から無数の魔法を放つ。ドドは悪魔の鎧でそれを弾き、あるいはその身で受けながら……空に居るサレナにどう攻撃するか考える。

 オルフェのように魔法は使えない。キコリのように電撃を纏うこともできない。

 ならば……こうだ。


「フ……ンッ!」

「げっ!」


 その辺りに落ちていた石をドドは放り投げ、サレナはバリアで防ぐ。ガン、と音をたてて石は弾かれるが……ドドは気にもしないまま襲ってきたソイルゴーレムを殴り魔石を掴み出すと、今度はそれをぶん投げる。


「馬鹿なの、こいつ⁉」


 魔石はサレナのバリアに当たり、反応を起こして大爆発を起こす。それを見たドドは先程別のソイルゴーレムから取りだした魔石もぶん投げて再度の爆発を起こすが、その爆発による魔力煙が消えた後……そこにサレナの姿はない。

 倒したわけではない。逃げたのだと、ドドは小さくなっていく姿を見つけ舌打ちをする。


「まあ、いい。今はそれより……」


 ドドは倒れたままのキコリとオルフェに近づき、呼吸を確かめる。

 ……生きている。訳の分からないことを散々言っていた奴ではあったが、どうやら詰めは甘い。

 ドドはあの温泉で汲んできた水を、まずはオルフェに振りかける。

 ドボドボと水筒から流れ出る水は不思議な光を放ち、オルフェに「うう……」と呻き声をあげさせる。


「うむ」


 頷き、次はキコリへと水をかけていく。此方はすぐに飛び起きると斧をその手に呼び出し周囲を警戒し……水筒を持ったドドを見て「あれっ」と声をあげる。


「ドド?」

「ああ。あの妙な女は何処かに逃げて行った」

「ん、ああ。えーと……何か色々変わってる、よな」

「うむ」

「あー……進化したのね」


 よろよろと起き上がったオルフェが、ドドを見て即座にそう看破する。


「油断したわ……何あの襲撃。タイミングがとんでもないわね」

「ああ。俺たちが転移する場所まで分かってないとアレは出来ない」

「それについては分からんが。前の人生では人間だと言っていた」


 そのドドの言葉に、キコリとオルフェは驚愕の表情を見せる。

 前世持ちの転生者。アサトと名乗った男は別口なので除くとして、前のゴブリンも合わせ2人目だ。

 それも2人ともモンスターとしての転生だ。これは偶然なのか、それとも別の何かなのか……キコリたちには、分からなかった。

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