進化
「今よ、ゴーレム!」
ソイルゴーレムの足がドドを踏み潰そうと襲ってくる。転がって回避して、それでも追ってくるソイルゴーレムから逃れるべくドドは転がりながら立ち上がり、メイスを振るう。
ドズッと深く沈み込むような……けれど、一切効いていないと分かる音。このゴーレムは、ドドのメイスと相性が悪すぎる。
蹴り飛ばされ、それでもドドは相性がどうとか……そんなことは一切頭に無かった。
「足りない……まだ、力が足りん」
メイスを握り、走る。
今のドドでは、あのゴーレムを倒すことは難しい。
それはドドにも分かっている。キコリたちが起きてくれるのが最善だが、今はそれは考えない。
死んでいるかもなどとは、一切考えない。
ドドはただ、今の自分がどうやって勝てるかだけを考える。
「しつこい……ほんとしつこい! どうして死なないのよ! フレイムアロー!」
放たれた無数の炎の矢がドドの纏う悪魔の鎧に弾かれ、ドドの振るう悪魔のメイスに叩き消される。その姿に、サレナの姿に焦りが増していく。
「完璧に準備したのに……どうして? 世界の修正力だっていうの?」
何を言っているかは、ドドには分からない。分からないが……分かることもある。
(このままではドドが蹴り殺されるだけで終わる。このデカブツにはドドでは勝てん。なら……)
狙うべきは、あのゴーレムの肩にいるトロールただ1人。そう考え、ドドはソイルゴーレムの蹴りの瞬間、その足を足場にして飛び……もう1体のソイルゴーレムに殴り飛ばされる。
「ぐっ……!」
「ロックランス!」
「ぐがああああ!?」
「あはははは、そっちは効くのね!? そうか、なんか分かってきたわ!」
石の槍を無数に受け、ドドは吹っ飛ぶ。如何に悪魔の鎧といえど、ゴーレムや石の槍のように物理的なものとして顕現していては拳で殴られるのとそう変わりはない。
調子を取り戻したサレナの石や氷やらの魔法が降り注ぐ中で、ドドの瞳からは闘志が消えない。
「ふ、ふ。それでもドドは、戦えている」
自然と、ドドの口の端に笑みが浮かぶ。
そう、戦えている。あのトルケイシャの時の何も出来ない絶望に比べれば、こんなもの。
たとえ力の差が凄かろうと、それでも届くかもしれないと思える。
この状況で、仲間の役にたてると思える。自分が倒れてはならぬと、そう自覚できる。
それが戦士にとって、どれほど光栄であることか。
「ああ、ああ……素晴らしい。キコリよ、オルフェよ……友よ。ドドは、お前たちに恥じない戦士であろう」
ドドの身体から、ミシリという音が響く。有り得ぬはずの、超短期間での連続2度目の進化。
それが今……ドドに起こっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます