隣に立てる男でありたい
「進化した⁉ 今此処で、オークが⁉ 有り得ない、そんなご都合主義的な……有り得ないわよ!」
「現実を見ろ。ドドは友の為に強くなったぞ」
「何が友の為よ! ゴーレム!」
サレナはソイルゴーレムに命令し、その一撃がドドを大きく吹き飛ばす。
そう、ゴブリンが進化するようにオークも進化する。
人間社会やオーク社会で知られている一般的な進化としてはオークリーダー、ハイオーク、オークファイター……様々な進化をするし、オークたちも自分が進化したことを理解できる。
その分類で言うのであれば、今のドドはオークファイター。より戦闘に適した進化をしたオークであり、「鍛冶師でもあり戦士でもある」と自称していたドドに合うものであるかは分からない。
だがドドは自分自身が戦士の身体になったことを自覚し歓迎していた。
(分かる。今までよりもメイスの扱いが良く分かる。どうすればより効果的か、自然と浮かんでくる……)
叩く、叩く。自分の作ったメイスでもあるからこそ、そしてオークファイターであるからこそ……その扱いをドドは鍛冶師として、そして戦士としても深く理解していた。
「サモンゴーレム!」
「むっ」
叫ぶサレナが、ドドの背後に更に新しいソイルゴーレムを生み出す。
「そんな進化した程度で何が現実よ! 思い知らせてやろうじゃない!」
2体のソイルゴーレムに挟まれ、ドドのサイズの合わなくなってきた鎧がへこんでいく。
強い、攻撃が重い。メイスで充分に威力を発揮する為の距離を、取り切れない。
「邪魔しないですよ、私の未来を! この雑魚……さっさと死んで!」
「そうだな、ドドは弱い」
攻撃を受けながら、けれど冷静にドドは呟く。
弱い。ドドは、自分が弱いと自覚している。キコリやオルフェと比べ、ドドはあまりにも弱い。
キコリにも、ドドにはオルフェを守ってくれれば……といった期待をされているのをドドは理解していた。
しかし逆に言えば、その程度にしか期待されてはいない。
キコリは強い。そしてオルフェにバーサーカーと呼ばれる程度には躊躇いがない。
けれど無意識のうちにそれを他人に求めないようにしている。
キコリは、自分が「普通ではない」と理解してしまっている。
だからこそ「一緒に戦う」ことを好んではいても、自分の隣に誰かが立てるとは思っていない。
その未来が自分に訪れるなどとは期待していないのだ。
当然だろうとドドは思う。キコリはドラゴンだ。その力を発揮しきれない状態であるらしいが、それでも最強生物の一角なのだ。
だとしても。だとしてもだ。
「ドドは、キコリの隣に立てる男でありたいと。そう願っている」
ドドは……友の為に、もう一段「登れる」と、そんな確信と共に蹴り飛ばされ転がった。
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