脳まで満たされる殺意
樹上の村を、キコリたちは歩いていく。濃厚な死の匂いの漂うこの場所には、いつか此処の住人を模したデモンが現れるのだろうか?
そうしていく中で、何も知らない人間の中でデモンもモンスターの中に分類され、やがて区別がつかなくなっていくのかもしれない。「デモン」などというものと、普通のモンスターの区別など……人間には、分からないし、どうでもいいのだから。
そうして辿り着いた転移門の前で、キコリたちは武器を構え直し、一気にその中へと飛び込む。
何が待っているかは分からないが、油断はしない。そう判断し転移した……その先で。
キコリは自分に向かって振り下ろされるハンマーが、頭のすぐ上に「来ている」のに気付く。
「は?」
避けるとか避けないとか防ぐとか防がないとか、そういう問題ですらない。
それはすでにキコリに当たる直前。キコリの頭に向けて、目の前の何かがキコリにハンマーを命中させた。
ゴヅンッと。キコリを地面に打ち倒し縫い付けて、それでは足らぬとばかりにキコリへとハンマーの連打が続く。
トロール。オークと比べると大分細身な印象がある、けれどしっかりと筋肉のついたモンスターたちは……ドドにも数人で組み付き、その動きを抑え込み、押し倒して頭を何度も兜の上から殴っている。これもまた、ドドが転移門から現れたその瞬間に組み付き押し倒していた。
「ぐ、あ……」
「う、く……」
フェイムとオルフェも同じ。転移門から出たと同時にこん棒で殴られ、地面に落ちている。
「グガガガガ」
「グゲウア」
やがてキコリが動かなくなったのを見てハンマーを振り下ろしていたトロールがハンマーをどける。その生死を確かめるように見て……もう1度、振り下ろそうとして。キコリが起き上がり、振り下ろされたハンマーの先を掴む。
「グガッ⁉」
「ブレイク」
一瞬で砕け散るハンマーに驚愕するトロールを、キコリの手の中に現れた斧が切り裂く。
痛みにうずくまるトロールのその首を、容赦なく斧を叩き下ろし切断。
周囲から襲ってくる他のトロールを前にキコリは軽く息を整えて。瞬間、斧が凶悪に煌く。
そして、大剣を振り下ろしたトロールがその大剣ごと、ザンッと軽すぎる音をたてて切断される。
「グヒッ⁉」
「グ、グゲガガ!」
「何言ってるかは分からないけどさ」
キコリの目が、漏れ出る魔力で淡く輝く。放たれる「圧」は、とある種族特有の絶対的なソレだ。
ドラゴン。キコリがドラゴンとしてのその力を剝き出しにすることで放たれる圧に、トロールたちが逃げ腰になる。
「とりあえず、殺す」
脳まで満たされる殺意。放たれるはドラゴンロア。生かしては返さないというキコリの宣言が、響き渡る。
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